#452 Porina ulceratula Zahlbr.

淡水生被果地衣類の中では,地衣体が連続し灰褐色であり,被子器が顕著に突出せず概ね褐色であることで特徴づけられる.被子器が目立たないので,見過ごされやすい可能性がある.

岩上生マルゴケ属の中では,顕著な果托を生じそこにシュウ酸カルシウム結晶を含む種群と,子器の色彩が似ているが,本種の果托は比較的薄く,シュウ酸カルシウム結晶を欠き,子嚢胞子が平行4室であることで容易に区別できる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,岩上生,連続し基物上に広がり,割れ目を欠くか,まばらに目立たずに割れ,平滑かわずかに皺を生じ,剥がれ落ちず,ただし被子器が過熟後に脱落するとクレーター状の痕跡を残し,平滑,光沢がないかわずかにあり,褐色がかった灰色,灰色がかった褐色,鮮時は時に緑褐色から緑灰色,明瞭なプロタルスを欠き,裂芽・粉芽を欠く.被子器は果托があり,ドーム状に突出するか,時にほぼ半球形,直径 0.25~0.5 mm,基部はくびれず裾が広がり,平滑,基部では地衣体と同色,上部では多少とも橙褐色,あるいは全体が橙褐色,ふつう頂部は丸く孔口は目立たない.粉子器は未見.

【内部形態】地衣体は厚さ 20~40 μm,明瞭な下菌糸と皮層を欠き,全体が異形菌糸組織,シュウ酸カルシウムの結晶を欠き,菌糸の内腔は長さ2~5 μm,幅 2~4 μm,菌糸壁は厚さ 0.5~1 μm.果托は顕著でシュウ酸カルシウムの結晶を欠き,明瞭な外殻を欠き,孔口付近ではいくらか橙赤色を帯び,中央部では厚さ25~30 μm,異形菌糸組織で菌糸壁(厚さ約2μm)は固く癒合し,共生藻細胞は連続した単一細胞の層をなす.果托皮層はやや顕著で,厚さ約
5 μm.果殻は無色,側方と下方で厚さ 5~15 μm,上部で外殻と融合する.子嚢下層は無色,厚さ5~10 μm.子嚢層は扁平となった卵形で高さ 75~170 μm,幅 140~220 μm.周糸は不明.側糸は分枝しない.子嚢は紡錘形から円筒形,約75 × 10~15 μm,薄壁,顕著な頂部の肥厚はない.子嚢胞子は18~30 × 5~6.5 μm,並行4室,無色,薄壁,薄いペリスポア(1~2 μm)がある.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】静岡・三重・高知・宮崎県から記録がある.暖温帯の,河川上流の半ば水没した岩上で見つかった.(文献1)

サワノマルゴケ/沢ノ丸苔

Porina ulceratula Zahlbr.

【異名等】

【文献1】Harada H. 2015. Saxicolous and corticolous species of Porina (Lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 1). Lichenology 14(1): 1-26

執筆:原田浩,2023