#453 Strigula australiensis P.M.McCarthy

 

暖温帯の,渓谷の森林内の水辺近くで見つかった被果地衣類.サワマンジュウゴケStrigula aquaticaに似るが,子器がより黒いことと,子嚢胞子が並行多室ではなく石垣状多室であることで区別できる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,基物表面上に広がり,薄く,剥離せず,平滑(ただし基物岩石の粒子,結晶が突出することがある),わずかに褐色を帯び,光沢は無く,他の地衣体と接するときに暗色のプロタルスがみられる.被子器は突出し,±多少とも円錐形からドーム型,直径
0.3~0.55 mm,基部はくびれず,広がり,輪郭は明瞭,ごく暗い褐色からほぼ黒色,あるいは薄い地衣体で覆われ,光沢は無く,孔口の周りは白っぽい.粉子器は未見.

【内部形態】外殻は果殻に圧着し,果殻基部あるいは基物にまで達し,下方で多少とも厚くなり,中央部では厚さ 40~60 μm,ごく暗い褐色;菌糸の内腔は概ね直径 1 μmで伸長し,様々な方向に延びる.菌糸壁は互いに強く合着する.果殻は無色,側方と下方で厚さ 10~15 μm,上方では外殻と融合する.子嚢下層は厚さ 15 μm.子嚢層はほぼ球形,高さ 170~180 μm,直径 180~190 μm.側糸はわずかに分枝し癒合し,直径 0.5~1 μm.子嚢は棍棒状で 75~90 × 約 15 μm,頂部に顕著な肥厚が認められる.子嚢胞子は 23~30 × 7.5~10 μm,無色,亜石垣状多室,6~7 の横隔壁と,たいていは1つの縦隔壁があり,薄壁(0.5~1 μm,隔壁は 0.1~0.3 μm), 顕著な外膜を欠く.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】静岡,宮崎,鹿児島から記録がある.暖温帯の,渓谷の水辺近くの岩上で見つかった.

イシガキマンジュウゴケ/石垣饅頭苔

Strigula australiensis P.M.McCarthy

【異名等】

【文献1】Harada H. 2016. Saxicolous species of the genus Strigula (lichenized Ascomycota, Strigulaceae) in Japan. Lichenology 14(2): 73-89.

執筆:原田浩,2021