#460 Verrucaria margacea (Wahlenb.) Wahlenb.

 

半淡水生の痂状地衣.淡水生アナイボゴケ属の中で以下の形質によって特徴づけられる.地衣体は薄く連続し,湿時にゼラチン化しない.被子器は,比較的大きく(たいてい直径は0.3~0.5 mm),しばしば円錐形に突出し,薄い地衣体で覆われ(多少ともまだらになることが多い),子嚢胞子は比較的大きい(22~30 × 11~13 μm).

 明らかに突出し大きな被子器をもつことからオニサワイボゴケ V. andesiatica に似る.しかし本種の被子器の表面を覆う地衣体が不均一で まだらになる傾向が強く,子嚢胞子がハロで覆われることで区別できる.(文献1を一部改変)

 

【外部形態】 地衣体は連続し薄く,割れないか,わずかに割れ,褐色から暗褐色,湿時にゼラチン化しない.被子器は突出し,ふつうは円錐形で,ときに半球形,直径0.3~0.5 mm,しばしば薄い地衣体で覆われ(まだらになる),ふつう頂部付近は黒く光沢がある被子器壁を裸出し,頂部の孔口付近はしばしば淡褐色で乳頭状に突出する.

【内部形態】 地衣体は厚さ30~40 μm,暗色の基層を欠き,皮層は厚さ10~15 μmで,髄層に類似する.髄層は異型菌糸組織で,菌糸間の空隙をほとんど欠く.被子器(外殻を除く)はほぼ球形か幅広の倒洋ナシ形.外殻は側方に広がるか果殻を包み,いずれも果殻基部の高さまで達し,上部はごく暗い褐色からほぼ黒色で菌糸壁は肥厚し,下部は異型菌糸組織で褐色の菌糸壁は褐色.周糸は中央部で長さ25~30 μm,概ね分枝せず,多少とも尖る先端に向かい,細くなる.子嚢胞子は22~30 × 11~13 μm,ハロで覆われる.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】確実な記録は秋田・栃木・和歌山・岡山から.暖温帯から冷温帯上部において,渓谷の森林内で発見された.(文献1)

オオアナイボゴケ/大穴疣苔

Verrucaria margacea (Wahlenb.) Wahlenb.

【異名等】

【文献1】Harada H. 2012 Taxonomic Study on the Freshwater Species of Verrucariaceae of Japan (2). Genus Verrucaria. Lichenology 10(2): 97-135.

執筆:原田浩,2021