#461 Verrucaria nipponica Zahlbr.

 

淡水生の痂状地衣.日本産淡水生アナイボゴケ属の中で以下の形質によって特徴づけられる.地衣体は微小な円盤よりなり(この構造は地衣体周辺部ではしばしば確認できるが,中央部では判別は難しい),これが集合 し,厚くなった地衣体が明らかに区画化し,暗色の基層が著しく厚く, 被子器は埋もれ,子嚢胞子は中くらいの大きさ(20~29 × 9~12 μm).(文献1を改変)

 

【外部形態】地衣体は微小な円盤(直径0.1~0.2 mm)からなり(この形状は地衣体周辺部ではしばしば確認できるが,地衣体中央部では完全に連続し確認が困難),集合し重なり合って厚くなり,中央部では明らかに区画化し,明瞭なプロタルスを欠く.区画は多角形で,たいてい径0.5~1 mm で,平坦,淡~中程度の灰褐色だが,日当たりのよ い場所ではやや暗褐色.他の地衣体と接する時には,地衣体周辺の区画はときに厚く,大形化(径1~3 mm)することがある.被子器は地衣体に埋没し,ほぼ平坦か幾らか突出し,直径0.1~0.2 mmの褐色の乳頭状の突起が孔口の周りにできるか,直径0.2~0.3 mmの黒色の頂部を裸出する.粉子器は普通にあり,地衣体区画に埋もれる.

【内部形態】地衣体は明瞭な皮層を欠き,ふつう暗色の基層は顕著で非常に厚くなり(上層の何倍かに達することはふつう),異型菌糸組織.地衣体上層は異型菌糸組織で,菌糸間にはわずかに空隙がある.外殻は上部では果殻と融合し下部では地衣体の暗色の基層と融合する.周糸は中央部で長さ20~50 μm,ほぼ単一かわずかに分枝し,しだいに細く なり先端がとがる.子嚢胞子は20~29 × 9~12 μm,ハロを欠く.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】比較的開けた河畔の岩上に生育し,日当たりのよい場所でも見かけることができる.しばしば カワイワタケDermatocarpon miniatumやサワノ ミドリゴケEndocarpon japonicumと同所的に生育する.(文献1)

ヤマトアナイボゴケ/大和穴疣苔

Verrucaria nipponica Zahlbr.

【異名等】

【文献1】Harada H. 2012 Taxonomic Study on the Freshwater Species of Verrucariaceae of Japan (2). Genus Verrucaria. Lichenology 10(2): 97-135.

執筆:原田浩,2021