#474 Enchylium tenax (Sw.) Gray | |||||
石灰岩地を代表する広義イワノリ属の葉状地衣.石灰岩の間の土の上に生えることが多い.裂片は線形で膨れ,裂片の長軸に沿った窪みができるのが特徴.(文献1)
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【外部形態】地衣体は葉状,直径2~4cm程度,明らかに分枝し,多少ともロゼット状となる.裂片は多少とも類線形でわずかにあるいは著しく斜上し(特に地衣体中央部の裂片),幅0.5~1.5mmほど,厚い(末端の肥厚部以外で0.1~0.15mm程が多い).背面は裂片の長軸に沿ってしばしばまばらな大きな皺があり,暗緑褐色,ときに暗灰色,平滑,光沢はない.腹面は背面より淡色で,ときに淡褐色,灰色など様々,平滑で,ときにわずかに樋状に窪み,類白色のリゾハイフェの集合が突出部に点在する.ほぼ直立する裂片では,背面と腹面の区別が不明瞭となり,長軸に沿って二三から数条の大きな皺がある.ときに球形の裂芽を生じ,これは棍棒状に生長することがある. 子器は裂片の類縁部から中央に生じ,はじめは地衣体に完全に埋没し,次第に果托が顕著となり,やがて無柄となり,直径0.8~2mm程度になる.縁部は若い子器では顕著で,子器盤より突出し全縁,子器盤が突出すると見えにくくなる.子器盤は概ね赤褐色,わずかに光沢があるかほとんど光沢を欠き,はじめ窪み,のちに平坦,さらに突出する. 【内部形態】果托に偽皮層を欠く.果殻は繊維菌糸組織.子嚢層は厚さ110~130µm.子嚢胞子は紡錘形,19~27×6.5~8µm,平行4室.(文献1を一部改変) |
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【化学成分】- 【分布と生態】岩手県・新潟県・長野県・静岡県・岡山県・徳島県・高知県・福岡県・熊本県.石灰岩周辺の土上や蘚苔類上に生育する.(文献1)
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イシバイイワノリ/石灰岩海苔 Enchylium tenax (Sw.) Gray, Nat. Arr. Brit. Pl. (London) 1: 397 (1821). |
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【異名等】≡ Lichen tenax Sw., Nova Acta Acad. Upsal. 4: 249 (1784). ≡ Collema tenax (Sw.) Ach., Lich. univ.: 635 (1810); Degelius, Symb. Bot. Upsal. 13(2): 150–183 (1954); Degelius, Symb. Bot. Upsal. 20(2): 46–49 (1974). |
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【文献1】原田 浩.2023.石灰岩生地衣類(3).広義イワノリ属(Collema s.lat.).Lichenology 22 (1·2): 43–57. |
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執筆:原田浩,2024.1 | |||||
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