#502 Enchylium coccophorum (Tuck.) Otálora & al.

 

石灰岩上に生育する,広義イワノリ属の鱗片状地衣.かつて日本でCollema coccophorum (=Enchylium coccophorum) とされていたのは同定違いであり,原田(2023)によってあらためて日本新産として報告された.採集されたのは微小な個体で,見過ごしやすい.(参照:文献1)

 

【外部形態】地衣体は概ね鱗片状,放射状に広がる裂片からなる.裂片は基物に圧着し,縁部は斜上(ほぼ直立)するため樋状となる.斜上する縁部は板状となり,その先端は切れ込み,ときに小裂片化(幅0.2~0.5mm,厚さ約0.1mm)し,緑褐色を帯びたほぼ黒色,光沢を欠き,粉霜を欠く.

子器は,斜上する裂片縁部に生じ,裸出し,直径0.4~0.8mm,縁部は周りの地衣体と同色,はじめ顕著で全縁,のちめだたなくなる.子器盤ははじめ窪むが,概ね平坦,はじめ縁部とほぼ同色だがわずかに赤味があり,粉霜を欠き,のちに時に赤褐色となる.

【内部形態】果托に偽皮層を欠く.果殻は繊維菌糸組織.子嚢層は厚さ60~75µm.子嚢胞子は17~24×7~9µm,2室.(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】北海道.石灰岩に付着していたが,ごく薄い土壌が堆積していた.(文献1)

 

チヂレイシバイイワノリ/縮石灰岩海苔

Enchylium coccophorum (Tuck.) Otálora, P.M.Jorg. & Wedin, Fungal Diversity 64: 286 (2014). (2013).

【異名等】 ≡ Collema coccophorum Tuck., Proc. Am. Acad. Arts & Sci. 5: 385 (1862) [1860]; Degelius, Symb. Bot. Upsal. 13(2): 184–189 (1954); Degelius, Symb. Bot. Upsal. 20(2): 41–43 (1974); non 吉村,原色日本地衣植物図鑑 : 229 (1974).

【文献1】原田 浩.2023.石灰岩生地衣類(3).広義イワノリ属(Collema s.lat.).Lichenology 22 (1·2): 43–57.

執筆:原田浩,2024.1