#507 Anisomeridium ubianum (Vain.) R.C.Harris

 

樹皮着生の痂状地衣.被子器は黒く,地衣体から突出する点では,Pyrenulaサネゴケ属と同様だが,地衣体が白っぽく,UV+黄色になるので,暖温帯に分布するほとんどのサネゴケ属からは区別できる.本属であることを確実に同定するには,子器の縦断切片を作り,子嚢層内菌糸系が分枝癒合し網目状となること,子嚢胞子が2室(あるいは平行4室)であることなどを確認する必要がある.

 

【外部形態】地衣体は痂状,樹皮内生,やや褐色をおびた淡灰色(白っぽい)で,時に黄色を帯びる.周囲の輪郭は黒っぽい.

被子器はほぼ裸出し,ドーム状に突出し,直径0.25-0.7mm,ほぼ黒色かごく暗い灰色,光沢はなく,基部は薄い地衣体で覆われ,側方か頂部近くに孔口がある.

粉子器は被子器に似るが,直径0.2mmほど.

【内部形態】地衣体は明瞭な皮層を欠き,繊維状の緩い菌糸からなり,共生藻はスミレモ類.被子器壁は良く発達するが,基部にはなく,ごく暗い暗褐色からほぼ黒色で,基物の樹皮断片を含み,厚さ50~100μm.子嚢下層は中央で厚さ約40µm.子嚢層内菌糸系は,盛んに分枝癒合し,網目状となる.子嚢層は油滴を欠き,I−,KI−.子嚢は75-95×15-20µm,顕著なアピカルプラグがあり,オキュラーチャンバーは狭い.子嚢胞子は側面から見るとスリッパ形で,24-32 × 7-9 µm,2室. 大粉子は13-17 × 6-8 µm,単室.小粉子2-3 × 1-1.5 µm,単室.

(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】千葉県(文献1).暖温帯の,森林内の樹幹上で見つかっている.

オオニセゴマゴケ/大偽胡麻苔

Anisomeridium ubianum (Vain.) R.C.Harris

【異名等】

【文献1】Harada H. 2001./ Taxonomic notes on pyrenocarpous lichens in Japan (4). Anisomeridium ubianum (Vain.) R.C.Harris (Monoblastiaceae)./ Hikobia 13: 411-414.

執筆:原田浩,2021