#598 Scytinium gelatinosum (With.) Otálora et al. | |||||
石灰岩生の葉状のラン藻地衣.鱗片状(比較的小さな葉状)だが,石灰岩生のイワノリ科としては普通の大きさ.石灰岩生のScytiniumヒメアオキノリ属の中では,裂片が丸く,ロゼットを形成することでよく似るS. intermedium ミヤマヒメアオキノリとは,本種は裂片の表面が著しく皺を生じることで異なる.
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【外部形態】地衣体は鱗片状,直径1~2cm,高さ約5mmのロゼット状となる.裂片は丸く,幅2~5mmほど,縁部は立ち上がり,地衣体中央部では直立する.裂片縁部は全縁かわずかに切れ込む.表面は灰色を帯びた暗い紫褐色で,地衣体下部では灰色,全体が著しい皺で覆われる.地衣体中央部の裂片の縁部ではしばしば厚さ0.1mmほどに見える. 子器はレカノラ型,直径0.25~0.6mm,無柄,基部は多少ともくびれる.果托は子器盤近くでは,薄くやや橙色から赤褐色係,ときに果殻との境界は不明瞭,子器側方では地衣体と同色.果殻は子器盤の周囲に明瞭に認められ,褐色を帯びた橙色,厚さ0.03mm.子器盤は,多くはわずかに窪み,のちにわずかに突出することがあり,暗赤褐色,粉霜を欠き,わずかに半透明. 【内部形態】地衣体の被送付明瞭で,1細胞層からなる.上皮層は厚さ7~10µm,下皮層は厚さ8~12µm.髄層は,繊維状の菌糸がまばらに配列し,フォトビオントはNostocで明らかに数珠状.果托皮層は1細胞層,厚さ6~9µm.果殻は子嚢層の側方で厚さ25~30µm,亜異形菌糸組織,子嚢層の下方で厚さ30~40µm,異形菌糸組織.子嚢層は厚さ160~180µm.子嚢胞子は20~39×10~14µm,亜石垣状多室,横隔壁は4~8.(文献1を一部改変) |
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【化学成分】- 【分布と生態】北海道の1地点のみから知られる.石灰岩の転石上の蘚苔類マット上に生育していた.(文献1)
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シワヒメアオキノリ/皺姫青木海苔 Scytinium gelatinosum (With.) Otálora, P.M. Jørg. & Wedin, Fungal Diversity 64(1): 290 (2013) [2014]. |
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【異名等】≡Lichen gelatinosus With., Bot. Arr. Veg. Gr. Brit. 1: 710 (1776). ≡Leptogium gelatinosum (With.) J.R.Laundon, Lichenologist 16: 219 (1984); Gilbert & Jørgensen, in Smith et al., The Lichens of Great Britain and Ireland: 546‒547 (2009). = Leptogium sinuatum (Huds.) A. Massal., Memor. Lich.: 88 (1853); Thomson, American arctic lichens, 1. The macrolichens, pp. 261, 263 & 265 (1984). |
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【文献1】原田 浩.2023.石灰岩生地衣類(2).ヒメアオキノリ属Scytinium(イワノリ科 Collemataceae).Lichenology 21 (1): 1‒17. |
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執筆:原田浩,2024.1 | |||||
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