#604 Catillaria lenticularis (Ach.) Th.Fr.

 

石灰岩生の痂状地衣.本種は,石灰岩上に生育するビアトラないしレキデア型の裸子器を生じる地衣類であり,無色で2室の子嚢胞子を生じる.日本産のCatillariaフタゴイボゴケ属も,日本産の痂状の石灰岩生地衣類も,充分に解明されていないため,類縁種が今後発見される可能性があるが,とりあえず,上述の形質によって特徴づけられる.

 

【外部形態】地衣体は石灰岩上に薄く広がり不明瞭で,連続するか,割れて,ほとんど区画化し,淡褐色.縁部は不明瞭.裸子器は点在するかやや密集し,ビアトラ型からレキデア型,無柄,直径0.3‒0.5 mm.子器盤は褐色(多少とも淡い黄褐色気味のものから,やや暗い褐色まで)~ほぼ黒色,通常は粉霜を欠くがまれにごく薄くかぶり,光沢はなく,はじめ平坦だが,後に突出することがある.縁部は薄く(厚さ0.05 mm 以下),はじめ多少とも子器盤より突出するが,子器盤が突出する大きな子器では不明となり,はじめ子器盤と同じかやや暗色(黒みがかる)で,子器の基部ではやや淡色.

【内部形態】 地衣体は顕著な皮層を欠き,共生藻は単細胞性の緑藻で直径は概ね4‒8 μm,密に均一に分布し,短い細胞(内腔は3‒5 × 2‒3 μm)状の菌糸に取り囲まれる.果殻の外層は厚さ5‒10 μm程度,暗褐色,さらに外側に無色の,薄い層を被る.内層は無色(外層に近い部分がときに褐色).ヒポテシウムは中央で厚さ55‒75 μm(下端は不明瞭),無色.子嚢下層は厚さ5‒10 μm.子嚢層は厚さ40‒45 μm,無色.ただし最上部は暗褐色(子嚢上層).側糸は先端でやや膨れるか顕著に膨れ(直径 3‒4 μm,菌糸内腔は約2.5 μm),暗褐色の明らかな帽をかぶり,中央部で直径約1 μm(菌糸内腔.時に0.5 μm),概ね単一.子嚢は棍棒状,約30 × 7 μm,先端に顕著なアピカルプラグ(厚さ約5 μm)があり,オキュラーチャンバーは不明瞭.子嚢胞子は1 子嚢中に8 個生じ,7‒10 × 2.5‒3 μm,無色,2 室.子嚢層と子嚢下層I +ごく淡い青,KI +濃青色.子嚢のアピカルプラグKI+ 一様に濃青色.

(文献1を一部改変)

【化学成分】-

【分布と生態】石灰岩上;岩手県・高知県(文献1).

フタゴイボゴケ/双子疣苔

Catillaria lenticularis (Ach.) Th.Fr.

【異名等】

【文献1】原田 浩.2022.石灰岩生地衣類(1).Catillaria lenticularis フタゴイボゴケ. Lichenoloty 20 (2): 49-54.

執筆:原田浩,2021