#616 Porina tetracerae (Ach.) Müll.Arg. var. tetracerae

岩上生ならびに樹皮着生マルゴケ属の,顕著な果托を生じる種の中では,地衣体に裂芽状突起を生じず,小いぼ状突起でも覆われず,子器の基部がくびれず,子嚢胞子は平行8室で中くらいの大きさで(長さ28 - 45 μm),両端が尖り,顕著な外膜を欠くことによって特徴づけられる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,連続し,多少とも凹凸(しわや多少ともいぼ状の突起も)があり,光沢があり,緑がかった黄褐色から灰緑色など.

被子器は顕著な果托があり,ドーム状に突出するかほぼ半球形で,直径0.35 – 0.65 mm,基部はくびれず,果托表面は平滑で,頂部は丸く,ときに孔口を中心として黄褐色となる.

【内部形態】地衣体は厚さ15 – 40 μm,顕著な皮層を欠く.果托は顕著で,シュウ酸カルシウム結晶の連続する厚い層を生じる.外殻は上部から中部では果殻と接し,わずかに側方に広がり基部まで達し,子器側方では厚さ20 – 40 μm,黄褐色.果殻は側方では橙褐色で厚さ概ね10 – 15 μm,上方では橙褐色で外殻と癒合し全体で20 – 25 μm.子嚢層は概ね球形.側糸はほぼ単一.子嚢胞子は28 – 45 × 4 – 7 μm,無色,平行8室(隔壁は7),薄壁,顕著な外膜を欠く. (文献1,2を改変)

【化学成分】記録なし

【分布と生態】静岡県以西(静岡県,静岡県,和歌山県,高知県,宮崎県,鹿児島県,沖縄県);主に常緑広葉樹林内の岩上,ときに岩上に生育.(文献2)

ヒメマルゴケ/姫丸苔

Porina tetracerae (Ach.) Müll.Arg. var. tetracerae

【異名等】

【文献1】Harada H. & Sato H. 2008./ Contributions to the Lichen Flora of the Yambaru Area, Okinawa, Ryukyu Is., South-western Japan (1). Genus Porina/ Lichenology 7(2): 131-142.

【文献2】Harada H. 2016./ Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 2)./ Lichenology 14(2): 91-118.

執筆:原田浩,2023