#622 Flakea papillata O.E.Erikss.

外部形態としては,ごく小さな端切れのような,ごく薄い帯状の,斜上する裂片と,全く光沢がない淡緑色(あるいはやや青みを帯びる)の色彩によって特徴づけられる.その地衣体はGAWで封入し生物顕微鏡で観察すると,菌糸細胞の表面にパピラが観察される.北米の植物採集家の間では,シダの前葉体なのか,藻類なのか,果たして何だろうといった議論があった,長い間謎の生物であったという.つまり,地衣類としても変わっている.(文献1)

 

【外部形態】  地衣体は鱗片状.裂片は帯状で,先端(あるいは全体)が斜上し,基部では幅0.2 ~ 0.4 mm,長さ2 ~ 3 mm.厚さは一様に薄く(実体顕微鏡下での観 察では約 0.02 mm に見える),ときに裂片中央部に小孔を生じる.裂片はわずかに分枝し,末端の裂片では 幅概ね 0.1 ~ 0.2 mm,ときに先端部は細かく切れ込み 小裂片化,さらには断片化し,容易に脱落する.背面は淡灰色で,鮮時は緑色かやや青色を帯び,光沢は全くなく,わずかに透き通るように見え,平滑.腹面は,概ね背面と同様だが,多少とも縁部が突出しわずかに樋状になることもあり, 縁部にまばらに偽根を生じる. (文献1を一部改変)

【内部形態】表面に微細なパピラを生じる.共生藻は単細胞性の緑藻,概ね球形,直径 4 ~ 8 µm(細胞壁を除く),単層か 2 層で互いに離れ概ね均一に分布す る.皮層(縁部の細胞で観察)は単一の細胞層からなり,各細胞は外側に丸く突出し,厚さ 4 ~ 6 µm,複数の パピラ(先が丸い円錐形で,根元は直径約 1.5 µm,長 さは概ね 2 ~ 3 µm)を生じる.パピラは縁部以外に も,地衣体全体の表面の細胞でも同様に生じる.偽根は,直径 3 ~ 4 µm の透明の菌糸がはじめ単一で,後に複 数が合着して生じ,時に暗色化する.(文献1を一部改変)

【生態】森林内や渓谷など,湿潤な地点の,樹幹や岩上に生育.

【分布】汎熱帯性.千葉県,和歌山県,鹿児島県から記録がある.

 

ハギレゴケ/端切苔

Flakea papillata O.E.Erikss.

【異名等】

【文献1】原田浩,2022/ 日本地衣類誌(8).Flakea papillata ハギレゴケ/ Lichenology 20 (2): 41–48.

執筆:原田浩,2023