#675 Graphis cervina Müll.Arg. | |||||
暖温帯に見られるモジゴケ科としては,岩上に生育する数少ない種の一つである.地衣体が褐色化しやすく,「樺色」になることから和名が付けられた. 四国~沖縄から記録のある岩上生のモジゴケ科としては,他に,①Graphis fissofurcata ヤマトシロミモジゴケと②G. hunanensis(グラフィス フーナンエンシス)が知られる.いずれも子嚢胞子が石垣状多室であることから,平行多室の本種とは容易に区別できる.
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【外部形態】 地衣体は黄褐色から,やや褐色を帯びた灰緑色,平滑,ときに半ば区画化し,光沢はない.子器(リレラ)は,地衣体にほとんど埋もれ,黒色で,多少とも分枝する.対となるラビアは互いにほぼ接し,子器盤はほとんど見えないかわずかに見える.
【内部形態】(子器横断切片)子器壁から子嚢層の下方まで全体が黒化し,特に下方に著しく伸長し基物にまで到達するとみられる.子嚢層は油滴を欠く.子嚢胞子は平行多室,細胞はレンズ状で6~8室,20-25 × 7 µm(文献1).
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【生態】渓谷などの湿潤な場所の,概ね半日陰の,岩上に生育する. 【分布】暖温帯に分布する.静岡県~九州(文献1).
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カバイロイワモジゴケ/樺色岩文字苔 Graphis cervina Müll.Arg. |
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【文献1】Nakanishi M. 1966/ Taxonomical studies on the family Graphidaceae of Japan/ J. Sci. Hiroshima Univ., ser. B, div. 2 (Bot.), 11 (1): 51-126, pls. I-V. |
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執筆,原田浩,2024 | |||||
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