#799 Porina nucula Ach.

岩上生ならびに樹皮着生マルゴケ属の,顕著な果托を生じる種の中では,地衣体にしばしば裂芽状突起を生じ(そうでないときは小いぼ状突起を密生し),子器の基部がくびれること,子嚢胞子は平行8室でやや大きく(長さ45 - 52 μm),顕著な外膜があることによって特徴づけられる.

 

【外部形態】地衣体は痂状,連続し,多少とも凹凸があり,通常は裂芽状突起を生じ(ときに密生し),または小いぼ状突起で覆われ,光沢があり,緑がかった灰色から灰色がかった黄褐色.

被子器は顕著な果托があり,半球形からほぼ球形となり,直径0.4 – 0.7 mm,基部は顕著にくびれ,果托表面は裂芽状突起あるいは小いぼ状突起を生じることが多く,頂部は丸く,しばしば孔口を中心として橙褐色から黄褐色となる.

【内部形態】地衣体は厚さ15 – 25 (– 40) μm,皮層を欠く.果托は顕著で,シュウ酸カルシウム結晶の連続する厚い層を生じる.外殻は上部では果殻と連続し,この状態は下方まで伸びときに基部に達し,子器側方では厚さ50 – 80 μm,黄褐色.果殻は側方では無色から橙色で厚さ約10 μm,上方では橙褐色で外殻と癒合する.子嚢層は概ね球形から僅かに上下に扁平.側糸はほぼ単一.子嚢胞子は45 – 52 × 8 – 13 μm,無色,平行8室(隔壁は7),薄壁,顕著な外膜(2 – 5 μm)がある. (文献1,2を改変)

【化学成分】記録なし

【分布と生態】静岡県以西(静岡県,宮崎県,鹿児島県,沖縄県);主に常緑広葉樹林内の樹幹上で,ときに岩上で見つかった.(文献2)

トゲマルゴケ/棘丸苔

Porina nucula  Ach.

【異名等】

【文献1】Harada H. & Sato H. 2008./ Contributions to the Lichen Flora of the Yambaru Area, Okinawa, Ryukyu Is., South-western Japan (1). Genus Porina/ Lichenology 7(2): 131-142.

【文献2】Harada H. 2016./ Saxicolous and corticolous species of Porina (lichenized Ascomycota, Porinaceae) of Japan (part 2)./ Lichenology 14(2): 91-118.

執筆:原田浩,2023