#814 Phloeopeccania japonica H.Harada

 

地衣体は概ね痂状のラン藻地衣(シアノバクテリアをフォトビオントとする).地衣体は黒く膠質,はじめ顆粒状で,のちにこれが集合し,集塊状の,直径1‒3.5 mmのクッションを形成する.子器はクッションに無数埋もれ,子器盤は直径0.15‒0.4 mm,ほぼ平坦,暗赤褐色,粉霜を欠く.地衣体は,厚い透明な粘液鞘で包まれ,菌糸はまばらな網目状となる.

 

【外部形態等】 地衣体は概ね痂状,はじめは直径0.05‒0.12 mm ほどの顆粒からなり,のちにこれが集合した,直径1‒3.5 mmの集塊状のクッションを形成する.これは多角形から不定形で,頂部は平坦で,イボ状の突起(顆粒あるいはほぼ円筒形の裂片に相当)で覆われ,後にほとんど盾状に見えることがあり,上方に成長し,ぶどう状あるいはそれが幾つかに分かれることがある.裸子器はクッションに無数生じ,地衣体に埋もれ,果托縁部が明瞭な場合には厚さ約0.1 mm,多少とも凸凹して,しばしばイボ状突起で覆われる.子器盤は直径0.15‒0.4 mm,ほぼ平坦かわずかに突出し,暗赤褐色,光沢があり,粉霜を欠く.

【内部形態】地衣体は皮層を欠き,無色から淡褐色の粘液鞘で覆われ,同層,フォトビオントの細胞(オリーブ色から橙褐色)が散在し,網状に配列する繊維状の菌糸に連結する.フォトビオントは単細胞性のシアノバクテリア(おそらくGloeocapsa )で,細胞は球形から腎形で,細胞内容は黄色みがかった褐色から桃褐色,各細胞は厚さ2‒4 μm の橙褐色の粘液鞘で包まれる.果托は厚さ80‒250 μm かそれ以上で,ほとんど組織分化せず,周辺部ではフォトビオントの粘液鞘が明らかに褐色からオリーブ色で,更に外側はほぼ無色の粘液鞘で覆われ,これによって平滑な表面となる.果殻を欠く.子嚢層は厚さ110‒140 μm で無色.側糸はごくわずかに分枝・癒合し,直径1‒1.5 μm(細胞内腔),頂端細胞はまれに拡大する.子嚢胞子は1子嚢中に8 個生じ,亜球形から広楕円体,9‒11 × 7‒9 μm,細胞壁は厚さ0.5‒1 μm,無色,単室.造嚢器は(特別な分化を伴わず)通常の地衣体内に生じる.粉子器(Fig. 3D)は地衣体に埋もれ,楕円体,単室.粉子柄はほぼ単一,たいていは長さ10‒15 μm.粉子は楕円体から桿形,3‒6 × 1‒1.5 μm,単室.(文献1を一部修正)

【化学成分】ー

【分布と生態】千葉県(文献1)

スミツブノリ/墨粒海苔

Phloeopeccania japonica H.Harada

【異名等】-

【文献1】Harada H. 2023./ Phloeopeccania japonica sp. nov. (Lichinaceae), a new cyanolichen from Chiba-ken, central Japan./ Lichenology 21 (2): 33–40.

執筆:原田浩,2024