房総の植物誌づくりと中央博物館 |
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3 房総の代表的な植物誌 紹介 ![]() |
![]() 3-(1) 千葉県の植物(1932年): 千葉県で最初の植物誌 3-(2) 千葉県植物誌(1958年): 日本初の生態的植物誌 3-(3) 千葉県立中央博物館自然誌研究特別号2 「房総半島の植物相と植生」(1995年): 専門的、通向けの植物誌 3-(4) 「千葉県の保護上重要な野生生物--千葉県レッドデータブック--植物編」(1999年): 画期的なレッドデータブック 3-(5) 千葉県立中央博物館自然誌研究報告特別号5 「房総の植物誌-海藻・蘚苔類・大型菌類・地衣類-」(2002年) 花が咲かない植物や菌類のインベントーリ 3-(6) 千葉県史 千葉県の自然誌(1996年以降毎年刊行) 千葉県の誇る自然誌の一般書 |
3-(1) 「千葉県の植物」 | |||||||||||||||
1932(昭和7)年、千葉県植物採集会発行:絶版。
見たい人は・・・千葉県立中央図書館で保存しています。 千葉県博物採集会(一時、千葉県植物採集会と呼称)の活動の成果としてまとめられた本です。 同会を組織した当時千葉県立成東中学校(現同高等学校)の教諭であった與世里盛春先生が、自身の採集品を牧野富太郎博士の鑑定(同定)結果としてまとめた本であり、千葉県としては初めての植物誌です。 シダ類94種を含む1410種の維管束植物が扱われています。 この中には、園芸植物(本の中では培養植物や裁植植物と記されている)や帰化植物などが扱われており、その由来も述べられています。 また、発育状態や薬用、有毒などの情報も記されており、単なる目録ではなく、後の植物誌の原形とも言える本です。 |
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3-(2) 「千葉県植物誌」 | |||||||||||||||
1958(昭和33)年、千葉県生物学会発行:絶版 ・・・こちらも、千葉県立中央図書館で保存。
千葉県博物採集会が戦争で自然解散した後に誕生した「千葉県生物学会」によって発行されました。 この本は単に植物目録だけでなく、植物の生態や、植物の分類と分布、植物方言なども扱われており、同会を発足した沼田先生が目指した生態学的な視点が盛り込まれた生態的植物誌(Biological Flora)です。 我が国では初めてとなる本格的な地域の植物誌として知られています。 その後、1975(昭和50)年に、本学会によって「新版千葉県植物誌」として改訂されました。 維管束植物の他、コケ植物も目録が掲載されています。 |
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3-(3) 千葉県立中央博物館自然誌研究特別号2 「房総半島の植物相と植生」 |
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多くの分類群が扱われた千葉県初の植物誌です。 →さらっというけど、これが凄いことなんですよね・・。 維管束植物誌: 千葉県産維管束植物チェックリスト。 106種が千葉県初記録です。 また、生活誌標本の意義と作成方法も分かりやすく解説しています。 蘚苔類誌: 文献に基づく千葉県産コケ植物目録が掲載されています。 海藻誌:沖の島の海藻相。また、9分類群の正基準標本を示しています。 菌類誌: 千葉県産菌類誌(I)大型担子菌類相。文献と標本に基づくリストが掲載されています。 地衣類誌: 東金市の地衣類。標本に基づくリストが掲載されています。 植生誌: 千葉県北部における照葉樹林の優占種の地域差、並びに大福山周辺の森林とその立地条件が明らかにされています。 |
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3-(4) 「千葉県の保護上重要な野生生物--千葉県レッドデータブック--植物編」 |
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普及版は1000円にて、財団法人 千葉県環境財団(電話 034-246-2078)から発行。 →いろんなところで活用されています。 →これまたさらっといいますが・・ 当館が準備室の頃から行ってきた「房総の植物誌」に関する調査研究の成果と資料の収集、整理保存の成果が、至る箇所にふんだんに活かされた本です。 まさに、当館がなくてはまとめられなかった本です。 独自の評価基準とカテゴリーを提案し、千葉県における植物の現状と保護の必要性を分かりやすく解説した画期的なレッドデータブックです。 また、維管束植物ばかりでなく、蘚苔類(コケ植物)、藻類、地衣類、菌類、更に植物群落が扱われている点でも他に類を見ません。 また、他県に先駆けて出版され、地方自治体におけるレッドデータブックの先駆けとなった本でもあります。 |
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3-(5) 千葉県立中央博物館自然誌研究報告特別号5-房総の植物誌-海藻・蘚苔類・大型菌類・地衣類- |
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2002(平成14)年。千葉県立中央博物館 発行。 中央博ミュージアムショップにて販売、500円 花が咲かない植物や菌類のインベントリ(↓)です。
→花が咲かない植物と菌類はこれを見ればばっちり。 →収集された県内の標本数万点の標本が基になっています。 千葉県に産する海藻をはじめ、蘚苔類、地衣類、大型菌類の目録的な植物誌です。この本によってようやく県全体の植物相の全貌が見えてきました。 県全体を扱った目録的なものとしては次の論本が掲載されています。 ・千葉県産大型海産藻類目録 ・千葉県産コケ植物目録 ・千葉県産地衣類のチェックリスト(第3版) ・ 千葉県菌類誌-大型菌類追加目録- それでも、ここで扱われている仲間はまだまだ未知なことがたくさんあります。 ここで扱われている仲間の生物学的な植物誌つくりはこれからが本番です。頑張ります。 *インベントリとは:もともとは在庫目録という意味ですが、博物館活動において、単に収蔵目録という意味だけではなく、ある地域の自然誌を調べて目録を作る一連の活動も含んだ意味に使われます。 |
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3-(6) 「千葉県史 千葉県の自然誌」: カラー版の普及書 | |||||||||||||||
199年以降毎年刊行 千葉県刊行 千葉県の誇る自然誌の一般書 中央博物館で収集した多くの植物資料や標本は、千葉県史編纂事業「千葉県史 千葉県の自然誌」(千葉県発行)の中で大いに役だっています。
これは、千葉県の自然を分かり易く県民に提供するための資料であり、全12巻からなります。 その内、植物誌に関する巻は次の通りです。 ●「千葉県の自然」 (1996年 刊行。8900円) ●「千葉県の植物1−細菌類・菌類・地衣類・藻類・コケ類−」 (1998年 刊行。9700円) →花が咲かない植物のことがこんなに詳しく解説されている県は千葉県だけ。 →当館にいろいろな分野の専門家がいるからこそできた植物誌です。 いろいろな仲間を扱った真の.植物誌つくり実現への序曲となった一冊です。キノコや地衣類、海藻、コケ植物(蘚苔類)が扱われています。県内に生育する全属がわかりやすく解説されており、一般的な教科書としても高い評価を受けています。 ●「千葉県の植物2−植生−」 (2001年 刊行。9800円) ●「千葉県植物誌」 (2003年 刊行 絶版) →当館の収蔵標本を画像として生き返らせた画期的な植物誌です。 →当館で集めた50万件を越える分布データが活用されています。 →地域の植物誌つくりをリードしてきた千葉県ならではの一冊です。
千葉県に生育する2786種全種のカラー図版が掲載されています。カラー図版は、野外で撮影した写真ばかりでなく、生きた植物体や当館に収蔵されている乾燥標本をスキャナで取り込んだスキャノグラフィーと呼ばれる画像がふんだんに使われています。台紙に貼り付けられたおしば標本の画像は、色が復元され、まるで生きているかのです。この手法によって、当館に収蔵されている標本が見事に蘇りました。 また、当館が進めている「房総の植物誌」の調査研究活動によって収集された50万件を越える分布データが、カラーの分布図として示されています。
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→とは、言っても、まだまだ調査研究の途上です。調査されていない地域やよくわかっていない植物もたくさんあります。当館ではネットワークを更に広げ、次の植物誌つくりを目指しています。 | |||||||||||||||
●「千葉県植物写真集」(2006年 刊行予定)![]() |
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