雨降滝の川廻し   --特異な川廻し--

  荒川の川廻し

 フルカワに洪水用の遊水路が作られているのに注目。
 他の川廻しにはない。

所在地:勝浦市荒川
水系:夷隅川本流
地質:上総層群黄和田層の泥岩。
 しかし、この地形を見て、川廻しってこういうものと思ってはいけません。それこそ早とちり。
 この川廻しは千葉県では他に類例のない特異な川廻しなのです。

 この川廻しについては、森輝氏の記述(森輝『夷隅風土記』千葉県文化財保護協会発行、昭和52年 141頁)を引用すると、『荒川は、もと山田村より分れて、一村をなしたという。荒川の名は、夷隅川が部落を迂曲し、洪水の被害が多かったので、名づけられたとも考えられる。この水害を避けるため、江戸中期(前記白石村と同時)川廻しをして、今の新川に改修した。雨降滝も、その際出来たものである。』とある。

 図のフルカワ沿いの曲流を、シンカワの切通しで短絡。フルカワの上流側の入口に堤防がみられる。
 シンカワ部分では、川床はすべて基盤の黄和田層泥岩からなる。雨降滝はシンカワの末端の川廻し当初の位置から約50mほど上流側に後退し、滝の直下には、深い全面滝壷を作っている。

[特異性]
 フルカワ沿いに本流と連絡した水路があり、ナカジマをかこんでいる。この地形は、他に類例のない、特異な形をした川廻し地形である。
つまり、通常の川廻しの場合は、以前の水路は埋めたて等により消滅し、洪水時の排水路としても機能しなくなるが、この川廻しにおいては大きな水路が残され、分流路あるいは留流池機能を持っているかのようである。 この地形から、文献のいうように、この川廻しは、むしろ、洪水対策を主眼として短絡されたのかもしれない。養老川、小櫃川の本流沿いにも、大きな川廻し地形があるが、このようなナカジマをめぐる水路のある川廻しは存在しない。
 近年の洪水対策を目的として小櫃川等で行われた曲流短絡では、旧流路が水のない川となって残っており、形態的に、この川廻しの形と類似している。
保存もよく、貴重な事例である。

文献:吉村光敏ほか(1996)勝浦市内の「川廻し新田」について。勝浦市史研究2号.11-54
    吉村光敏(1997)勝浦市内の「川廻し新田」について(2)。勝浦市史研究3号.109-134


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