教室博日記 No.2070

 2022/02/09(水)

 リスと球果

 君津市の山中にて。地面にバラバラになった何かが落ちている(写真1)。どうやらリスが食べた松ぼっくりの残骸のようだ。

地面に落ちていたリスが食べた松ぼっくりの残骸
  • 写真1

 「松ぼっくり」はマツの果実のこと。松ぼっくりのように、中心の軸のまわりに多数の鱗片が重なってつき、球形や円柱形になった果実のことを球果という。マツをはじめとしてスギやヒノキなど針葉樹の果実の多くが球果である。

 リスは球果が好きらしい。球果の鱗片と鱗片の間には種子が入っているので、球果をかじってバラバラにして種子を食べるようだ。リスにかじられた後のマツの球果はエビフライに似ていることから、「森のエビフライ」などと呼ばれている(写真2)。

  • 写真2 エビフライそっくり

 見つけた「エビフライ」はアカマツの球果のようだ。アカマツの球果はマツ属の中ではそれほど大きくないので、「エビフライ」もかわいいサイズになる。今日見つけたものはさらに小さめなので「小エビフライ」といった感じ。球果のサイズは同じ種内でも変異が大きい。個体差もあるし、1本の木についている球果でも大きいものから小さいものまで様々なことが多い。しかし、この日歩いた山の尾根に転がっているアカマツの球果はなぜかほとんどが小さい。中央博物館本館に併設された生態園のアカマツの球果と比べると、違いがよくわかる(写真3)。なぜなのかはわからない。

  • 写真3 左の3つがこの日山で拾ったもの、右の1つが生態園のもの

 この日はもうひとつ、リスの食事の痕跡を見つけた。石の上にバラバラになった鱗片。モミの球果だ(写真4)。

石の上でバラバラになったモミの球果
  • 写真4

 モミの球果については、過去の教室博日記でも紹介されている(教室博日記No.1992)。モミの生えた山を歩いていると、リスが食べたあとのバラバラになったモミの球果鱗片を見つけることはそれほど珍しいことではない。しかし、その多くが写真4のように石や倒木などの上にあるのは不思議だ。何かしらの「台」の上のほうが食べやすいのだろうか。「小エビフライ」の謎とともに、いつか解いてみたいものである。

  • アカマツ Pinus densiflora(マツ科)
  • モミ Abies firma(マツ科)

(西内李佳)