2020/07/02(木)
ヒメハルゼミ
清澄山系にて。木の幹の低い位置に止まったセミを見つけた(写真1)。ヒメハルゼミのオスだ。

- 写真1
オスのセミは大きな鳴き声を生み出すための「複弁(ふくべん)」という器官が発達している。写真2で脚の向こうに見えている角の丸い三角形のものが複弁。そして、複弁の下に見える黒い小さな突起はヒメハルゼミのオスに見られる特徴だ。

- 写真2
付近の地面に落ちていた枯れ枝には羽化する前の幼虫がいた(写真3)。昼間に幼虫を見ることはあまりない。他の多くのセミと同様に、ヒメハルゼミも通常は夜間に羽化するからだ。

- 写真3
ヒメハルゼミは木の幹などに登って羽化することが多いが、この幼虫が取り付いたのは高さ30センチほどしかない枯れ枝であった。枯れ枝が垂直に立ち上がっていたので適当な木だと思ったのかもしれない。枯れ枝の先端でじたばたしているのは、もっと高いところに登りたいからなのだろう(写真4)。

- 写真4
しばらくすると幼虫は向きを替えて枯れ枝を降り始めた(写真5)。登るのをあきらめ、いったん地面に降りて別の木を探すつもりなのかもしれない。

- 写真5
昼間にあまり動き回ると、天敵の鳥に食べられてしまうかもしれないので、この幼虫をつまんで近くの木の幹に移してやった(写真6)。

- 写真6
木の幹に移すとすぐに、幼虫は幹を登り始めた(動画)。「夜のうちに羽化するつもりだったのに、すっかり遅くなっちゃった」とでも言わんばかりに、一目散の勢いで。やがて見えなくなったが、無事に羽化できただろうか。
3年前の日記にも書いたが、ヒメハルゼミは「千葉」の名を持つ昆虫だ。このセミは千葉県茂原市鶴枝(つるえ)の森で採集された標本に基づいて100年以上前に新種として命名された。その産地にちなんで学名に「千葉の」を意味する「chibensis」とつけられたのだ。茂原市鶴枝のヒメハルゼミ発生地は国指定の天然記念物となっている。
- ヒメハルゼミ Euterpnosia chibensis(セミ科)
(尾崎煙雄)