《洛北の早春》 1934(昭和9) 油彩・カンバス・額  65.5×80.5cm
前へ 戻る 次へ
都鳥英喜

1943(明治6)〜1943(昭和18)

 樹々が高く枝を伸ばし、暖かな陽光をうけて新芽を息吹かせている。新緑の草木とともに田園が後方へと伸び、はるか遠方には山がうっすらと青く姿を見せている。空は大きく広がり、山と樹々との対比がより奥行きを強調し、また画面をひきしめている。軽快な筆触とみずみずしい色彩による写実描写の中に、穏やかでさわやかな早春の洛北風景の情趣がとらえられている。
 都鳥は、近代日本洋画の先駆者浅井忠の従弟として佐倉に生まれた。都鳥家は、代々、馬術師範をもって佐倉藩につかえた家柄である。浅井から洋画を学び、わが国最初の洋風団体である明治美術会展をはじめ、太平洋画会展、文展、帝展などを舞台に作品を発表した。1902年(明治35)には、浅井に従って京都に移り、関西洋画壇で活躍する一方、京都高等工芸学校、聖護院洋画研究所、関西美術院などで後進の育成につとめた。京都周辺の自然を好んでモチーフとし、外光派的な風景画に本領を発揮した。(藤川正司)