《稲毛の女漁師と子ども》1892〜97 油彩・カンバス・額 24.0×32.0cm
前へ 戻る 次へ
ビゴー

1860〜1927:Georges-Ferdinand BIGOT

 1882年(明治15)にフランスから来日したビゴーは、1899年(明治32)に帰国するまでの約18年間、画家、記者として日本の世相をつぶさに観察し、油彩、水彩、銅版画、デッサン、写真などの多様な方法で、明治期の政治や庶民生活をとらえ、雑誌や画集等においてその成果を発表した。ビゴーが稲毛に住んだのは1892年(明治25)頃から1897年(明治30)頃の間といわれている。稲毛海岸にある別荘式の旅館「海気館」の傍らに家を建て画室とした。当時、稲毛は海水浴場、保養地、別荘地として注目されていた。「海気館」は、1888年(明治21)に開設され、政治家や文人墨客が多数訪れていた。ビゴーは、稲毛海岸の周辺の風景や労働する人々の姿などを興味深く眺め描いた。
 この作品では、子守りをしながら働く娘や、天秤で荷を運ぶ女性の姿を活写している。彼方には、海中に浅間神社の一の鳥居が立ち、帆掛け舟が何隻も浮かんでいる。戦後、埋立てにより変貌してしまった稲毛海岸の明治中頃の情景を伝える記録画ともなっている。(藤川正司)