《聖母子》 1921 ブロンズ  250.0×91.0×57.0cm
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ブールデル

1861〜1929:Emile-Antoine BOURDELLE

 この《聖母子》は、『捧げものの聖母』または、『アルザスの聖母像』とも呼ばれている。1919年に第一次世界大戦の戦没者のための記念像が依頼され、アルザス州のニーデル・ブリュックの丘に1922年、6mに及ぶ石造の彫像が建立された。このため、4年にわったて、石膏、ブロンズ、大理石で大小様々な習作がつくられた。この作品は、そのうちの一つである。
 聖母は幼子を捧げるかのように高く肩までさし上げている。幼子は、両手を左右に広げ片方の手を聖母に握られ、もう片方を聖母の頭上に置き、物思わしげな表情で見下ろしている。幼子は十字架のイメージであり、顔を傾けた聖母は自分が担う神の重さを予感しているかのようである。足元から上へと続く衣の襞は、聖母の体の動きに沿って緩やかな曲線を描き頭の衣へと続き、像をよりいっそう高く見せている。また、衣の膨らみは、像全体に安定感を与え幼子イエスを支える聖母の強さを感じさせる。(石崎千津子)