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考古3本立て展 展示紹介
こんな風に見るともっと面白い


水鳥形埴輪
 今回の展覧会の展示品について、中央博物館の別の分野の専門家の意見を聞いたり、素朴な疑問をぶつけてみたりしたら、見るわれわれの側から見て面白いことが出てくるのでは・・・ということで、企画しました。
 
 別の分野の先生をお願いして、考古分野の先生と、ど素人の記者の2人でいろいろ聞いてみました。というフィクションです。
 
 今回は、水鳥形埴輪について、
鳥の専門家 どーどーさん(ルイスキャロルのドードー鳥が好きらしい)に、折り目正しい考古の堀太郎と、不養生のせいで糖尿になった記者フーおやじが話し合いました。

水鳥形埴輪:奈良県巣山古墳出土
フーおやじ・・・「これはかっこいいですね。いかなるものですか? ポスターにもありますね。」

堀太郎
・・・「奈良県広陵町巣山古墳の発掘調査で、出島状遺構が発見されました。
その出島には、形象埴輪が並べられていたと考えられており、高さ約60cmの水鳥形埴輪が2点、約45cmが1点、合計3点が出土しました。
水鳥形埴輪がそろって3点も出土することは、大変、稀なことなのです。」・・・少々セリフ棒読みの観がある。

「出島ってのは、右の画像の周濠の裸地の所デス。」
フーおやじ・・・ 「鳥だとは分かりますが、種類まで分かるもんでしょうか。まずは、何故、水鳥だって分かるんですかね。」
鳥のどーどーさんに写真見てもらう。

どーどーさん・・・・「そんなことは一目でわかるよ。埴輪をよく見てみなされ。」
フーおやじ+堀太郎 ・・・見て分かるぐらいなら、聞かないよね。見れども見えずなのよね、と思う・・・「どこで、水鳥とわかるの? あっさり教えてくださいな。」
どーどーさん・・・・「埴輪の頭部に、嘴があって、丸まった形の胴体をしていて、首が長いでしょ。こうゆう特徴は、陸で生活する鳥類の特徴ではなく、水鳥の特徴なのよね。」 (^0_0^)
フーおやじ・・・「なるほど、雀には似てませんね。」・・・と感心する。
どーどーさん・・・・だんだん乗ってきて、・・・・「じゃあ、水鳥の中でもどの種類かを考えてみるかね。
 首が長く体つきが、スマートな鳥としては、サギの仲間やツルの仲間などが思いつくよね。けれども、これらほとんどの水鳥の嘴は、鋭く、尖っていますよね。
 ゆえに、サギの仲間やツルの仲間をかたどった埴輪ではないことが、一目瞭然ですね。」
フーおやじ・・・「なるほど、そう言われればそうですね。」 
・・・では、これが、口先を、拡大した画像です。

・・・・「怪獣じみてるけど、結構、目とか鼻の穴とか表現してあって写実的ですね。ほほう、一見、ラドンに似てると思っていたけど、ドナルドダックのほうが近いですね。」・・・と感心する。

どーどーさん:
何で、ラドンが出て来るんだ、困ったもんだと思いながら・・・・・


「埴輪の長い首のさきについている嘴の形を見ると、平べったい形をしていて、カモたちの特徴をよく表現しているね。」

「その他、カモの仲間の特徴として、ふっくらした丸みを帯びた胴体に、長くのびた首、足にはひれがあるね。埴輪には、ひれがありませんけど。」 

「ハクチョウ・ガン・カモなどが、カモの仲間で、これらの鳥たちは、共通して水辺での生活に適した形をしているのだよ。 分類で言うと、カモ科にあたるね。埴輪を見れば見るほど、カモ科の鳥だね。」・・・と連呼。この辺好調 (^_^)v
堀太郎・・・「千葉県の遺跡からも多くの動物の遺体が発掘されています。
哺乳類に比べ、鳥類の骨は硬くないので、遺体としては、それほど多くは残りません。さらに、鳥類の骨の同定は、とても難しいため、種まで特定される例はあまりありません。それでも、その中からハクチョウの仲間の骨も見つかっておりますね。」
 ・・・・相変わらず棒読み
どーどーさん・・・・「現在、生化学的な研究により、正確な識別方法が確立されつつありますが、種の特定にまではなかなか至っていないというのが、現状です。」
 ・・・・・つられて棒読み
フーおやじ・・・ 「なんか、種の鑑定については、予防線張ってるみたいですね。
ウフフ。カモ科の中の何って、分かるんですか?」(^_-)-☆
どーどーさん・・・・「水鳥形埴輪の鳥が、ハクチョウか?ガンか?カモか?
うーーむ。結論言うと、確実なことはいえないんだよな。」 ・・・・歯切れ悪くなる

マガモ

マガン

コハクチョウ
フーおやじ・・・ 「お言葉ですが。だんだん首が長くなるじゃないですか。
一目で違いがあると思いますけど。」 ・・・と、つっこむ。
どーどーさん・・・・ 「フッフッフ。・・・これがシロートのドツボ・・・カモの首は長いんだよ。皆がカモの姿としてイメージするのは水面に浮かんでいる時で、その時には、首を縮めていることが多いの、警戒したときや飛翔しているときに見ると、首は長いのじゃ。」

「それに、日本には、約50種のカモの仲間が飛来しているので、この中から、埴輪の鳥がどの種かを決めることはできないね。正確な羽根の色や大きさなどがわからないと種は特定できませんね。」・・・と、必要も無いのに胸を張る。
フーおやじ・・・ 「うーーむ。専門家に聞くと、こうゆう回答が多いんですが、『よく分かっているからこそ、分からないことが分かる』、という答えですね。 ですけど、そこで、もう一押しどうですか。」
どーどーさん・・・・ 乗せられてしまい、少々リップサービス。
「確実じゃないけどね。ハクチョウやガンは、カモに比べて、首は長いからね。
古代に生きた人たちが、水面に浮かび首をのばしているハクチョウやガンをみて、この埴輪を創ったのかもしれませんね。」
 うーーん
「埴輪の首の長さと、ハクチョウを比べるとかなり合う。」
 うーーん
「あと、ハクチョウと、ガンとのどちらであるかは、どうでもいいことみたいだけど、重要そうだね。 『何故、古墳にこの埴輪が置かれたのか』を考える際に、白い目立つ色のハクチョウと地味な色のガンとでは、えらく違うでしょうね。」
 うーーん
「それから、埴輪の鳥が、ハクチョウだったとして、コハクチョウとオオハクチョウの2種が日本に来るんだけど、そのどちらだろうかね。分かったら面白そうですね。」
フーおやじ+堀太郎 ・・・
 「どうもありがとうございました。 実物がきたら、また、よく見てくださいね。
『水鳥形埴輪の世界』
という題で、ミュージアムトークもやられるということですから期待してます。(^_^) (^_^)v」 ・・・といって去る。
どーどーさん・・・・
「そうそう、2006年2月8日の14:30から30分、ミュージアムトークやるんだ。あの記者ぐらいにも分かるように話すのは、ちょと面倒だな、作戦を練らねば。 ・・・・しかし、わしの学識なら簡単さ」 ・・・と、自画自賛で終了。 
現生の鳥の画像は、箕輪義隆氏(挿絵工房)の提供によるものです。

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