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総発掘ものがたり━各展示コーナー解説書━

 東国の前期古墳━辺田1号墳━ 

<(財)市原市文化財センター作成資料による>
所在地

辺田(へた)1号墳は、市原市の辺田古墳群中の1基で、通称国分寺台と呼ばれる南に養老川をのぞむ標高20m前後の台地上に位置し、下層には当域最大級の過密集落跡、御林跡遺跡が存在する。
JR内房線五井駅から南東約2.2km地点。南に約600mの位置には出現期古墳(纏向型前方後円墳)とされる神門古墳群(3・4・5号墳)が存在する。
遺跡の概要
 古墳時代 辺田1号墳は直径約32mの円墳で、墳丘の中央に位置する埋葬施設には被葬者が弥生時代の終わり頃に活躍していたことを示す副葬品が収められていた。
 頭部からは小型素紋鏡、左胸部からは管玉1点が、素環頭大刀と短剣は左腰、大刀と剣は右腰の位置からそれぞれ剣先を足元に向けた状態で出土した。
 また柄の付く槍とヤリガンナは、共に被葬者の頭部を越えた位置で、剣類とは切先を正反する状態で出土している。ヤリガンナの刃部には布の付着が認められ、刃部が布で巻かれて埋葬されたことを示している。

 この埋葬施設の周囲には畿内の前期古墳の多くに見られる排水溝を思わせる区画溝が存在し、供献用の土器として底部穿孔壷・底部穿孔坩、器台・鉢等が、この区画溝に囲まれた範囲から集中的に検出されている。
展示資料
底部穿孔壷>
 土器としては機能しない底抜けの壷形土器。儀器として当初から底抜けに作製する焼成前穿孔と、器の完成後穿孔する焼成後穿孔の2者が存在する。本墳例は全て前者で、当初から古墳供献用の儀器として作製された製品である。

 有段口縁鉢・屈曲口録鉢とも称され、畿内布留式の影響を受けた鉢型土器。
小型素文鏡
 舶載鏡を模倣して作成された小型ぼう製鏡(倭鏡)の一種。文様が退化・無文化し、更に小型化したもの。布留式に向け退化・小型化すると言われている。・・・「ぼう」は、人偏に方の字なのですが、ブラウザの画面上では文字化けしてしまうので、ひらがなにしました。
 <素環頭大刀
 東大寺山古墳出土の全長1.1mの索環頭大刀には、「中平□年」の文字が金象嵌されており、この大刀の製作が中国後漢代の西暦184〜189年間であり、魏から卑弥呼へ下賜された五尺刀と類似経緯での入手が指摘されている。
 また、椿井大塚山古墳・前橋天神山古墳などの三角縁神獣鏡を副葬する古墳からの共伴例が多く、卑弥呼の時代頃から本来の実戦用武器以外に、首長の権威を象徴する威信財の一つとして、鏡や剣などと共に珍重されていたと考えられている。

埋葬施設の周囲から出土した土器

埋葬施設から出土した大刀(中央:素環頭大刀)

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