きゅうやまにみそぼいらー

16 旧ヤマニ味噌ボイラー


佐倉市

産業関係・醸造業・醸造所

高さ8.5m,幅2.2m,奥行き5.1m
1911(明治44)年

1911(明治44)年,味噌醸造の際に原料となる大豆を蒸すために必要な蒸気を発生するボイラーである。1979(昭和54)年に味噌の醸造業をやめたため,それ以後は使われていない。

ボイラー周囲は煉瓦造りであり,イギリス積みを基本として積まれているが,一部でその積み方の規則性が乱れている部分が見られる。ボイラー周囲に放置されていた耐火煉瓦には,「SYOWAYOGYO」(“しょうわようぎょう”と読める。)と刻印されており,国産品であることが確認できる。また,一部煉瓦は風化が見られ,特に上面には風化した煉瓦と堆積した砂が溜まり,雑草が生えている状況である。

ボイラー本体は正面に設けられた鉄製の扉が錆びついており,扉を開いて内部を確認することは不可能であったが,焚き口と煙突がボイラー胴をはさんで正反対の位置に設けられていること,焚き口が比較的高い位置に設けられていること等から煙管を持っておらず,炉胴のみを持ったボイラーであると思われる。さらに燃料に石炭を用いていたこと,ボイラー胴板の規模等から比較的小型で炉胴が1本である「コルニッシュボイラー」ではないかと推測される。

発生する蒸気の圧力は,原料を蒸すための熱源として用いられており動力用ではないこと,取り付けられている圧力計の最大値が14kgf/cm2(1.4Mpa)であること,ボイラーの規模が比較的小型であることから,7〜8pgf/cm2程度ではないかと思われる。

また,給水装置(インジェクタ)等のボイラー付属設備も比較的良好な状態で現存し,水面計についてもガラス管が破損することなく残っており,これらを接続する配管類も一部腐食が見られるものの稼動当時のままであり,配管をたどって各器具の構成を確認することができる。

ボイラー上部には鋼板リベット止めの蒸気胴(スチームドーム)が姿をのぞかせており,発生した蒸気を取り出す主配管の他,インジェクタ,圧力計への配管が取り出されている。また蒸気胴上部には「複式安全弁」と呼ばれるテコ式安全弁とばね安全弁の2種類を組み合わせたものが取り付けられている。この安全弁は構造の異なった種類の安全弁を組み合わせて用いることでボイラーの安全性を高めているものであり,形式や個数,取付面積等については規則により詳細に決められている。

しかし,これらの付属装置は保安上の都合で,ある程度の期間で交換されることが多く,取り付けられているこれら器具の全てがボイラー設置当時からのものであるかは今回調査することが不可能であった。

(立川 勇・阿部貴憲)

地形図 「佐倉」(略)

写真16-1 旧ヤマニ味噌ボイラー (1997年) 写真16-2 蒸気胴と安全弁 (1997年)
写真16-3 給水装置 (1997年)

参考文献

1) 池谷武雄:原動機入門,株式会社オーム社,1963年
2) 近藤三郎:初学者のためのボイラーと蒸気原動機,理工学社,1964年


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