しおどめばし

36 汐止橋


鋸南町

交通関係・道路・道路橋

全長13.35m,幅員4.50m
1895(明治28)年

鋸南町道の本郷元名線,元名川に架かる石積み上路アーチ橋である。延長13.35m,幅員4.50mで1895(明治28)年に架設された1)。汐止橋は,国道127号線から左に折れて,元名川を200m程上流側にいったところにある。鋸南町に架かる他の石造橋の延長がすべて10m以下であるのに対し,汐止橋は一径間でありながら13.35mと最も長く,2)その形の美しさには目をうばわれる。

親柱には,上流側,下流側ともに漢字で「汐止橋」と彫られており,さらに上流側の親柱には「明治廿八年三月成」の文字が刻まれている。また,下流側の親柱にも何か文字が刻まれていたようであるが,すでにかなり風化しており,解読不可能である。

アーチリングは四重に積まれており,スパンドレル部は布積みである。普通,石橋の多い九州地方やその他の地域の石橋をみても,布積みの場合,石は水面に対して平行に積まれている。しかし,この汐止橋は,布積みでありながら各切石が,アーチリングにむかって斜めに積まれているのが特徴的である。切石の大きさは比較的小さく,煉瓦のような形に揃えられている。その積み方も長手と小口を組み合せて積まれており,煉瓦でいうフランス積みのように積まれている。さらに,アーチリング部の石も通常立方体に近い形のものが使われるのに対し,この橋では直方体のような横長の石が用いられている。これらは,非常に特徴的であり,技術的にも意匠的にも高いレベルにあるものと考える。

使用されている石は,千葉県鋸南町保田産の保田石であると推測される。保田石は,鋸山から採れる石で積石,地覆石等に用いられたと思われる。

この橋は,現在でも使用されており,保存状態も悪くない。しかし,上路部はコンクリートで再舗装されてしまっている。そのため,親柱の下部がコンリートに埋もれてしまい,親柱に刻まれた文字を最後まで正確に読むことはできない。また,親柱には,穴があけられ,高さ50cm程のところに高欄のように鉄棒が取り付けられている。しかし,これは橋梁完成時ではなく,後につくられたものであろう。さらに,現在はその高欄の内側に車が落ちないよう赤白の棚が設けられている。

(小早川 悟)

地形図 「保田」(略)

写真36-1 汐止橋のアーチリング(1997年) 写真36-2 汐止橋の橋側面(1997年)
写真36-3 汐止橋の親柱(1997年)
写真36-4 汐止橋全景(1997年)

参考文献

1) 鋸南町史編纂委員会: 鋸南町史,国書刊行会,1969年


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