ひがしにほんしもうさこうざきえき

46 JR東日本下総神崎駅


神崎町

交通関係・鉄道・駅舎

桁行:23.44m,梁間:6.37m
1898(明治31)年

下総神崎駅は1898(明治31)年に,成田線の成田〜佐原間開通に合わせて,元郡駅として設置された。1957(昭和32)年旧神崎町と旧米沢村が合併したのに伴い,下総神崎駅と改称され,それを記念する石碑が駅前広場の西側に立っている。その後,1981(昭和56)年から駅業務が民間に委託され,1986(昭和61)年国鉄が民営化され,JR東日本旅客鉄道(株)下総神崎駅として現在に至る。

同駅の施設は対向式ホーム2面2線,上下ホーム間を結ぶ鋼鉄の歩道橋,下りホーム側(北側)に建つ駅舎,倉庫,便所,それに現在は使われていない貨物引き込み線,同ホーム跡などから形成されている。

駅舎の建設時期は,同駅所有の平面図の記入から,1920(大正9)年4月と見られる。しかし,この図面は後のもので,建設当初の設計図面は現存しない。駅舎は,1898(明治31)年開通当時のものという可能性もある。以下の記述中,時代変遷に関するものは,旧国鉄の元従業員で,1950年代以降の同駅をよく把握している現在の駅長である鎌形正栄氏からの聞き取りに基づいている。

駅舎は東西棟の木造平屋である。現在,建物は梁間2間半(4.550m),桁行10間半(18.89m)の主要部分とその南側についた1間(1.8m)幅の開放的な張り出し部分(ホームの屋根に当たる)からなる。1間おきの柱に支えられたこの南面庇は主要部分の東妻より,誉夕間2間の落ち棟突出部として2間(3.640m)伸びている。主要部分の平面構成は,大きく分けて,東側の待合室,中央の駅務室と西側の宿泊室からなる。このうち,6畳の和室,浴室,便所,台所を含む桁行2間半の宿泊室は1989(平成元)年ごろの増築である。

外観では,主要部分の屋根は切妻で,落棟の宿泊室を除いて,桟瓦葺であるが,以前は,この地域でよく用いられたセメント・タイル葺であったという。張り出し部分の屋根はアスベスト板葺である。待合室の北側から梁間1間,桁行1間半の片流れ造屋根の開放的ポーチが突き出し,その下に袖壁付引戸2枚の入口がある。窓枠は木製であったが,防犯のためすべてアルミサッシが入れられている。駅務室上部には煉瓦造の煙突があったが,現在では新しい暖房器具の導入により,撤去されている。現在,内部に天井が設けられているが,本来は吹き抜けであったという。

待合室と駅務室の間に間仕切りがあり,その南半分は切符売窓口となっている。内側のカウンターの部分は新しい機械を入れるときに改築され,当初のものより20cm高くなっている。以前,旧国鉄は全国的に荷物輸送を行っており,同駅でも荷物取り扱い業務が行われていた。現在自動券売機の置かれているカウンターの間仕切りの北半分には,以前は4枚のガラスがはめられており,荷物口として使われていたという。同駅は貨物取り扱い駅であったため,最も多い時は,9人の職員が勤務していたという。現在は2人交代勤務になっている。

成田線の信号(閉そく)施設が自動化される以前は,通票(タブレット)による閉そく方式をとっており,そのための閉そく機が役務室南面の西側の張り出し窓に置かれていた。和室の宿泊施設増築以前は,駅務室西南角にある部屋に2段のベッドが設けられていて,宿泊のために使われていた。床も高くなっている。現在は,この部屋は倉庫になっているが,当初の宿泊設備は,夜間列車などの乗り物を意識して設計されたという印象を受ける。

駅の西側に,落ち棟屋根2間ほど出ているところは当初の出口の跡である。現在は待合室内の,当初の入口の部分のみを用いていて改札業務を行っている。最近の変化としては,新しい電算機の導入とそれにともなう駅務室床の一部かさ上げが挙げられる。

プラットホームは以前は駅舎内部と同じレベルで,縁石を除き土であったが,列車の電車化にともない,高さを20cmかさ上げし,舗装された。貨物ホーム跡に舗装前の様子を伺うことができる。また上下ホーム間に歩道橋が完成する前は,駅改札口の前方にホームから降りる門付石階段と構内踏切が設置されたという。倉庫(木造)は貨物取り扱い駅当時のものである。なお,駅舎は杉材を用いているが,倉庫は松材であり,材料の選択に建物の地位が表現されている。

備品,道具としては,駅舎南面庇下の木造ベンチ4個,開業日を記した木札や,現在同駅では取り扱わない「運転関係」事項を記入する黒板,金庫,救急箱,開通の御札等が保管されている。

この駅舎は保存状態はよく,20世紀前期の地方の駅の性格をよく伝える建造物である。手前の滑川駅と佐原のとなりの大戸駅と構成は強く類似し,成田線の標準駅の典型例として貴重である。

(モリス マーティン)

地形図 「佐原西部」(略)

写真46-1 下総神崎駅駅舎 南から(1997年)
図46-1 駅舎の平面図(現状)

参考文献

1) 下総神崎駅:駅勢概況
2) 山口恵一郎等:日本図誌大系,関東2,朝倉書店,1972年

※ウェブ版編集者注:現在は新しい駅舎に建て替えられています。


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