ちょうしでんきてつどうとがわえき

48 銚子電気鉄道外川駅


銚子市

交通関係・鉄道・駅舎

全長14m,高さ5.1m,幅6.8m
1923(大正12)年7月

1923(大正12)年7月5日,現在の銚子電気鉄道の前身である銚子鉄道開業に伴い建設されたもの。同時期に建設された駅としては他に笠上黒生駅がある。

建設から昭和30年代までは瓦葺き屋根であったが,現在ではトタン葺きに改装され,建物周囲の羽目板の一部もトタン板で補修された部分がある。また,出入り口や窓がアルミサッシ化されているが,建物内部の出札窓口は建設当時のものと思われる木造のものが現存している。1990(平成2)年に経営権が干葉交通から他の経営者に移った際,路線内の各駅舎を改装する計画もあったが,経済情勢の変化から計画は中断され,辛くも取り壊しを免れて,当時の面影を残したまま現在に至っている。

銚子地方は海水浴場が多く,マイカーの発達が現在ほどではなかった昭和30年代前半には海水浴客を中心とした観光客の輸送量が大きく,一時は国鉄の気動車列車が新宿から直通で乗り入れてきた時期もあった。利用客数は昭和40年代前半をピークに減少に転じており,交通手段の自動車化による鉄道全体に見られる傾向である。

もう一つの笠上黒生駅舎は,外川駅舎と同様に屋根瓦の葺き替えや外壁の補修等がなされているものの,それ以外の目立った改装はされていない。

また,この駅は路線のほぼ中央に設置されており,早朝,深夜以外は単線上を走る上り・下りの列車がすれ違いを行い,タブレットと呼ばれる通票を交換する。このとき上下両方向の列車が同時に構内に進入することを防ぐために構内の外れに信号機が設置されているが,それには県内でもここだけ,また全国的にも僅かが残るだけとなってしまった通称゛腕木式信号機"(正式名称:一条鉄索式信号機)が用いられている。これは腕木の角度によって"進行"や゛停止"信号を表示するもので,夜間は腕木部分に取り付けられた赤・青の色つきレンズを裏側から照らすことにより光で信号を表示する。

その腕木は信号機と駅舎に併設された挺子室の間に敷設されたワイヤにより操作されるようになっているが,寒暖の差によって操作用ワイヤが伸縮し,腕木が不安定になることを防ぎ,また万一操作用ワイヤが断線し操作不能となった場合に,信号機に取り付けられた重りが落下することにより直ちに停止信号を表示するような「エスケープクランク」と呼ばれる機構を備えるなど,簡単ながら安全を確保する技術を見ることができる。

(栗城一成・阿部貴憲)

地形図 「銚子」(略)

写真48-1 銚子電鉄外川駅舎 (1997年) 写真48-2 笠上黒生駅舎(1997年)
写真48-3 現役で活躍する腕木式信号機(1997年)

参考文献

1) 銚子電気鉄道(株::銚子電鉄ガイド,銚子電気鉄道(株),1982年


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