房総(千葉県)の地衣類図鑑
G3D2:(緑藻地衣)痂状(かじょう)地衣:被子器:子器は単独

痂状地衣の中でも,被果地衣(被子器を生じる地衣類)は,どの科や属に属するかを外部形態から判断するのが特に難しいグループです.そこで,正確な同定をするためには,子器の内部構造を確かめる必要があります.つまり,子器の縦断切片を作製し,プレパラートを作って,顕微鏡で子嚢や子嚢胞子,その他の組織を観察するといったことが必要です.

 なお,報告された種についても,必ずしも情報が十分にあるわけではないため,ここでは全種は掲載していませんので,ご注意ください.

 

大きな仲間分け
1a.被子器の子嚢層では,子嚢の間に側糸などの子嚢層内菌糸系がある(下図の①②)・・・2へ
1b.被子器の子嚢層では,子嚢の間に側糸などの子嚢層内菌糸系を欠く(下図の③)・・・Verrucariaceae アナイボゴケ科(●)へ
tinctorum
 

2. 子嚢の間に側糸などの子嚢層内菌糸系がある(上図の①②)

2a.孔口は子器の側方につく・・・3へ
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Lithothelium japonicum

ヒメサネゴケ

Megalotremis chibaensis

オオゴマゴケ

Cresporhaphis chibaensis

ニセマルゴケ

2b.孔口は子器の頂部につく・・・4へ
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Anosomeridium japonicum

ヤマトニセゴマゴケ

Coccotrema porinopsis

トゲアナツブゴケ

Monoblastia chibaensis

トゲミゴケ

ph ph ph

Porina hirsuta

ケマルゴケ

Porina internigrans

オオマルゴケ

Strigula aquatica

サワマンジュウゴケ

 

3.孔口は子器の側方につく(いずれも樹皮着生種)

3a.子嚢胞子は平行多室,糸状, 90 – 125 × 2.5 – 3 μm ・・・Cresporhaphis chibaensis ニセマルゴケ 

→(●)

3a.子嚢胞子は石垣状多室,30 – 54 (– 62) × 12 – 17 μm・・・Polymeridium proponens キヨスミゴケ

→(種のページは準備中)

3a.子嚢胞子は2室,40 ‒ 45 × 17 ‒ 18 μm・・・Megalotremis chibaensis オオゴマゴケ

→(●)

3a.子嚢胞子は平行4室,10-14 × 4-5 μm・・・Lithothelium japonicum ヒメサネゴケ

→(●)

 

4.孔口は子器の頂部につく

4a.生葉上生(常緑樹やシダなどの生きた葉の上に生育)・・・Porina マルゴケ属,Strigula マンジュウゴケ属など

→(準備中)

4b.岩上生か樹皮着生・・・5へ

 

5.岩上生か樹皮着生

5a.子嚢胞子は褐色(未熟時は無色)・・・Pyrenula サネゴケ属等(準備中)
5b.子嚢胞子は無色(褐色にならない)・・・6へ
 

6a.子嚢胞子(13 – 20 × 7 – 8 μm)の表面に棘状の突起がある.被子器壁は明らかに黒色.樹皮着生

・・・Monoblastia chibaensis トゲミゴケ(●)

6b.子嚢胞子の表面は平滑(棘状の突起を欠く).被子器壁は黒色から淡色.樹皮着生か岩上生・・・7へ
 

7a.子嚢胞子は単室で長さ約50 μm.被子器壁は暗化しない・・・8へ

7b.子嚢胞子は隔壁があり,2室・平行多室・石垣状多室のいずれか.被子器壁は暗化するものとしないものがある・・・9へ

 

8a.裂芽を生じる・・・Coccotrema porinopsis トゲアナツブゴケ(●)

8b.裂芽を欠く・・・Coccotrema cucurbitula アナツブゴケ(●)
 

9.子嚢胞子は隔壁がある(2室・平行多室・石垣状多室)

9a.果殻(子器縦断切片)はほぼ無色で,特に上部で厚くなる.被子器壁に暗色や橙黄色の部分はない

・・・Hyalopyrenia japonica シロザネゴケ(●)

9b.果殻は無色から淡褐色など,上部で顕著に厚くなることはない.被子器壁に暗色や橙黄色の部分があることが多い・・・10へ
 

10a.子嚢胞子は2室で大きく(55 – 74 × 17 – 22 μm),先端は丸い.キャンピリディアを生じる

・・・Trypetheliopsis yoshimurae クロウメボシゴケ(準備中)

10b.子嚢胞子は2室・平行多室・石垣状多室で,大きさは様々,先端は多少とも尖る.キャンピリディアを生じない・・・11へ
 

11a.子嚢頂部の子嚢内壁は顕著に肥厚し(アピカルプラグがあり),目立たないあるいは幅の狭いオキュラーチャンバーがある.子嚢間の子嚢層内菌糸系は概ね単一(分枝しない).子嚢胞子は平行多室(県外産では石垣状多室もある)

・・・Strigula マンジュウゴケ属 12へ

11b.子嚢頂部の子嚢内壁は顕著に肥厚し(アピカルプラグがあり),幅の広いオキュラーチャンバー(概ね半球形)がある.子嚢間の子嚢層内菌糸系は,明らかに分枝癒合する側糸状体.子嚢胞子は2室.地衣体は灰白色

・・・Anisomeridium ニセゴマゴケ属 13へ

11c.子嚢頂部の子嚢内壁は薄く,明瞭なアピカルプラグはない.子嚢間の子嚢層内菌糸系は,概ね単一.子嚢胞子は2室・平行多室・石垣状多室のいずれか

・・・Porina マルゴケ属(●)へ

 
 

12.Strigula マンジュウゴケ属(生葉上生種を除く)

12a.子嚢胞子は平行8室,26 – 43 × 6 – 9 μm

・・・Strigula aquatica サワマンジュウゴケ(●)

12b.子嚢胞子は2室,9 – 10 × ca. 2.5 μm

・・・Strigula minutula ヒメマンジュウゴケ(●)

12c.子嚢胞子は2室,13 – 17 × 4 – 5.5 μm

・・・Strigula nipponica ヤママンジュウゴケ(●)

ph ph ph

Strigula aquatica

サワマンジュウゴケ

Strigula minutula

ヒメマンジュウゴケ

Strigula nipponica

ヤママンジュウゴケ

 

13.Anisomeridium ニセゴマゴケ属

13a.岩上生(半淡水生種)子嚢胞子は小さい(9 – 16 × 4 – 6 μm)

・・・Anisomeridium japonicum ヤマトニセゴマゴケ(●)

13b.樹皮着生.子嚢胞子は大きい(24 – 32 × 7 – 9 μm)

・・・Anisomeridium ubianum オオニセゴマゴケ(●)

ph ph  

Anisomeridium ubianum

オオニセゴマゴケ

Anosomeridium japonicum

ヤマトニセゴマゴケ