資料収集,整理保存事業
 

Ⅱ.地衣類標本庫の運営

千葉県立中央博物館の植物と菌類の標本庫は,国際的にはCBMの略号で登録されています.

もくじ

Ⅰ.様々な標本

Ⅱ.地衣類標本庫の運営

Ⅲ.地衣類標本の作製

 

●1.標本庫の配置計画

 

千葉県立中央博物館1階の第3収蔵庫内の一角を地衣類標本庫が占めています.この地衣類標本庫を,以下のように区分しています.

★タイプ標本・展示用標本コーナー.タイプ標本は標本ロッカーに,展示用標本(主に含侵標本)は中軽量ラックに収めています.
★一般標本コーナー.タイプ標本以外の全ての整理済みの標本は,標本ロッカーに,また収めきれない分は,プラスチックケースに収めています.配列は学名のアルファベット順です.
★未整理標本・研究中標本コーナー.標本化の作業の途中の標本,研究中のため同定が完了していない標本などをプラスチックケースに収め,一時的に置きます.いったん「一般標本コーナー」に整理した標本でも,再検討が必要と判断した場合も,ここに移動します.
★閲覧コーナー.標本庫内の標本を検査するための場所で,実体顕微鏡や生物顕微鏡を備えています.
★文献コーナー.同定作業など,標本を整理する過程で必要となる図鑑や論文などの文献を整備しています.
001
013

タイプ標本コーナー

タイプ標本を収める標本ロッカー

一般標本コーナー

013

一般標本コーナーの標本ロッカーの引き出し

 

●2.標本の基本的な形,規格

 

◆◆パケット形式

地衣類の標本は,厚紙を折った,パケットというものに入れる,「パケット方式」です.維管束植物で採用されている,大きな台紙に貼りつけた「シート方式」とは異なります.シートにパケットを貼り付ける標本庫もありますが,標本を扱いにくくなるので,ここでは採用していません.
★パケット方式の利点.折った時の大きさを統一することによって,カードキャビネットという金属製のロッカーの引き出しに入れて,カードのように扱うことができて,とても便利です.
★パケットの規格.開館当初から地衣類標本のパケットは,折った時にB5判の変形サイズになる大きさを標準サイズとして統一していました.しかし収蔵スペースが不足しだした2015年頃から,やむを得ず,より小さな,小型パケットも併用しています.
★県内産の標本と,県外産の標本の区別.千葉県の標本は灰色のパケット,それ以外は薄茶色のパケットを使用し,千葉県産の標本であることが一目でわかるようにしています.
★ラベル.産地の情報,採集者・採集番号をはじめとする標本データを記したラベルは,標準サイズのパケットに,貼り付けています.小型パケットの場合には,パケットにラベルを直接印字しています.
001
013

千葉県産標本のパケット

県外産標本のパケット

001
013

押し葉にした資料をパケットに入れる

(上の標本パケットの中身)

基物の岩ごと採取した資料を台紙に貼った(上の標本パケットの中身)

 

●3.標本の管理

★収蔵されている標本を安全に保管するため,地衣類標本庫(つまり第3収蔵庫)の良好な環境の維持に努めています.その環境とは,高温・高湿度にならないこと(20°C,湿度50%を目指す),紫外線カットの照明にすること,標本害虫を持ち込まないことです.

★収蔵されている全標本をデータベース化し,これを資料台帳としています.

★地衣類の分類,学名に関する新しい知識を積極的に取り入れ,標本の再同定,データベースの最新化に努めています.
 

●4.標本データベース

 
産地情報をはじめとする標本のデータは,開館以来ずっとコンピューターに入力し,標本の管理等に活用しています.

★データ入力.採集後なるべく早い段階で,Excelの標本情報ファイルに以下のデータを入力します.登録番号,地名(都道府県,その他地名),生育基物,植生や地形,採集年月日,採集者+採集者番号.同定できている場合には,種名(学名),同定者,同定年月日も加えます.

001

Excelのデータ入力画面の一部

★ラベル出力.そのデータをもとに,ラベルに出力します.
★同定結果の入力.同定後(研究後),種名(学名)・同定者・同定年月日を入力します.ラベル出力前に同定が完了することもあります.
★論文原稿等へのデータ出力.標本データを整理した後に,論文や報告書の中の,検査標本のリスト用に出力します.
★千葉県立博物館の情報システムへのデータ移行.このデータを加工してデータを移行しています.
★千葉県レッドデータブック・レッドリストへの反映.千葉県産標本に関するデータは,県内の地衣類の保全のための基礎データとして利用され,レッドデータブックに反映されます.
★千葉県生物多様性地理情報システムへのデータ提供.県内の生物の分布情報を集約するこの地理情報システムにデータを提供することを通して,千葉県における生物の保全活動に役立てられています.