地衣成分は,地衣類が作り出す特有の化学物質とされます.
生物が作る化学物質には様々な種類があり,様々な形で存在していますが,地衣成分の場合にはどうなっているのでしょうか.
まず,ウメノキゴケから地衣成分を簡単に取り出す,その様子を紹介します.
よく乾燥した,きれいなウメノキゴケを5mm~1cm四方くらい用意し,スライドグラスの上に置きます.(実体顕微鏡下で,ピンセットを使ってごみを取り除いておく)
ウメノキゴケが浸るくらいの分量のアセトンを上から注ぎ,数分間静置します.
すると多量の白い粉末が現れます.
これが地衣成分です.
ウメノキゴケでは,大部分がレカノール酸,少量のアトラノリンが混じっています.
この状態だと,特徴はありませんが,さらし粉の水溶液(塩素系漂白剤)を少量付けると赤色に変色(レカノール酸が反応)し,水酸化カリウムの水溶液を少量付けると黄色に変色(アトラノリンが反応)します.この反応は,地衣成分を抽出しなくても,これらの試薬を地衣体に付けても得られます.
一方,抽出した地衣成分をスライドグラス上で結晶を作って観察すると,成分特有の形状をしているため,地衣成分の種類を同定することもできます.