1.地衣成分を抽出してみる

 

 地衣成分は,地衣類が作り出す特有の化学物質とされます.

 生物が作る化学物質には様々な種類があり,様々な形で存在していますが,地衣成分の場合にはどうなっているのでしょうか.

 まず,ウメノキゴケから地衣成分を簡単に取り出す,その様子を紹介します.

 
ウメノキゴケから地衣成分を抽出してみる
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よく乾燥した,きれいなウメノキゴケを5mm~1cm四方くらい用意し,スライドグラスの上に置きます.(実体顕微鏡下で,ピンセットを使ってごみを取り除いておく)

 

ウメノキゴケが浸るくらいの分量のアセトンを上から注ぎ,数分間静置します.

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すると多量の白い粉末が現れます.

これが地衣成分です.

ウメノキゴケでは,大部分がレカノール酸,少量のアトラノリンが混じっています.

 

 この状態だと,特徴はありませんが,さらし粉の水溶液(塩素系漂白剤)を少量付けると赤色に変色(レカノール酸が反応)し,水酸化カリウムの水溶液を少量付けると黄色に変色(アトラノリンが反応)します.この反応は,地衣成分を抽出しなくても,これらの試薬を地衣体に付けても得られます.

 一方,抽出した地衣成分をスライドグラス上で結晶を作って観察すると,成分特有の形状をしているため,地衣成分の種類を同定することもできます.

 次は地衣成分の結晶観察を覗いてみましょう.→「2.地衣成分の結晶観察」へ