4.地衣成分の分析

 

地衣成分を分析する技術は時代とともに進歩していきますが,特に地衣成分を同定する方法として,高速液体クロマトグラフィーを用いる方法が盛んに行われています.

4-1.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)

4-2.HPLC-PDA

4-3.LC/MS(エルシーマス)

4-1.高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
 薄層クロマトグラフィー(TLC)では,ガラスやアルミの板に貼り付けたシリカゲル層を,毛細管現象により地衣成分が解けた有機溶媒が自然に上がっていくのを待ちました.一方,高速液体クロマトグラフィー(以下,HPLCと略します)では,カラムと呼ばれるシリカゲル等を詰めた細いステンレスの管の中に,地衣成分が解けた液体をポンプを使って強制的に送り出すものです.

 地衣成分ごとに,移動相とカラムとの相性が異なるので,検出器に至るまでの時間(保持時間)は成分ごとに異なります.

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①移動相

目的とする化学成分の種類によって,用いる液体は異なるが,地衣成分の場合には,メタノールやアセトンを移動相(溶離液)とすることが多い.

 

②送液ポンプ

移動相を強制的にカラムに送り出すためのポンプ.

 

③インジェクター

分析する試料を注入.

 

④カラムオーブン

カラムは,シリカゲルなどの充填剤を,主にステンレス製の管に詰めたもの.これに試料が含まれる高圧のかかる移動相が通過するときに,分離が起こる(各化学物質が,充填剤との相性の違いによって,ある物質はすんなりと通過したり,他の物質は長時間滞留したりして,異なる時間にカラムから出てくる).この過程は温度により影響を受けるため,一定の温度に保つのがカラムオーブン.

 

⑤検出器 カラムを通過して順次出てくる移動相を,時間ごとにサンプリングし,含まれる化学物質を検出する.ここに様々な機器を組み合わせることによって,様々な分析方法をとることができる.これらは接続するコンピュータでデータが解析される.
4-2.HPLC-PDA

 「4-1.HPLC」のシステムに,検出器としてフォトダイオードアレー(PDA)を組み合わせたもの.カラムを通過してきた移動相にさまざまな波長の紫外線(UV)を照射すると,含まれる地衣成分の種類に応じて特定の波長の紫外線が吸収されます.つまり,波長ごとに吸収された割合を示す曲線,UVスペクトルは,成分ごとに特有であり,それを検出するのがPDAです.予め成分ごとにUVスペクトル(保持時間も)を計測してデータベース化しておき,HPLC-PDAで検出されたUVスペクトルと保持時間を比較することによって,試料に含まれる地衣成分を同定あるいは推定することができます.

 

4-3.LC/MS(エルシー マス:液体クロマトグラフィー質量分析法),  LC/MS/MS(エルシー マス マス)

 「4-1.HPLC」のシステムに,質量分析計(MS:Mass Spectrometer)を組み合わせ,分子量を計測できるようにしたもの.保持時間とUVスペクトルの情報を合わせることにより,地衣成分同定の精度が向上します.質量分析計を複数台連結した,LC/MS/MS(エルシー マス マス)を導入すると,特定の分子量の成分の検出精度が更に向上します.

 ※これらの分析技術の詳細については,より専門的な書籍・ウェブサイトをご覧ください.

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明治薬科大学で使用している様子(2023年1月)