タイプ標本の画像ページの見方

種名ごとに画像ページを制作しました.各ページの前半には文字情報が,後半には画像が掲載されています.ここでは,前半の文字情報について,「Agonimia deguchii H.Harada デグチツブゴケ」のページの前半(下のオレンジ色の枠の中)を例に説明します.

①Agonimia deguchii H.Harada デグチツブゴケ

② Agonimia deguchii H.Harada, Hikobia 16: 307 (2013).
③ 掲載論文: Harada H. 2013/ Agonimia deguchii (lichenized Ascomycota, Verrucariaceae), a new saxicolous species from central Japan/ Hikobia 16: 307-310.
④ 三重県の岩石上に生育していた標本をホロタイプとして,原田浩により新種記載されたアナイボゴケ科の地衣類.
⑤ ホロタイプ(holotype):Harada 16147 (CBM-FL-7130)
 
上の例で,①から⑤の番号を振りましたが,それぞれについて説明します.
◆①学名と和名.例:Agonimia deguchii H.Harada デグチツブゴケ

<学名>この例では,発表された新種の学名は「Agonimia deguchii H.Harada」です.「Agonimia」は属名,「deguchii」は種小名,「H.Harada」は著者名です.属名+種小名を組み合わせた「Agonimia deguchii」を種名と呼びますが,地衣類を含む藻類・菌類・植物では著者名まで書くのが正しい形です.
<著者名>ここでいう著者名とは,学名の著者名を意味します(論文の著者と異なることがあります).新種など新しい学名を発表するとき,その責任を持つ研究者の名前で,新種発表時に明記します.著者名の表示の仕方は国際的に統一されており,この著者のHiroshi Haradaの場合は,H.Haradaとなります.
<和名>和名を決めることは,新種発表の手続きとして必要ではありません.
◆②原記載(新種が掲載された論文上の位置).例:Agonimia deguchii H.Harada, Hikobia 16: 307 (2013).

新種を発表するときには,新種であることを明記する必要があるため,「sp. nov.」(新種)などを後ろに続いて,「Agonimia deguchii H.Harada sp. nov.」という形をとって発表します.この形が,2013年に出版された,「Hikobia」(ヒコビア)という学術誌の16巻の307ページに初めて掲載されたことを意味します.

◆③原記載の掲載論文:掲載論文: Harada H. 2013/ Agonimia deguchii (lichenized Ascomycota, Verrucariaceae), a new saxicolous species from central Japan/ Hikobia 16: 307-310.

この新種が掲載された論文は,著者が「Harada H.」,発表年が「2013」,論文のタイトルが「Agonimia deguchii (lichenized Ascomycota, Verrucariaceae), a new saxicolous species from central Japan」,掲載されたのは「Hikobiaの16巻,307-310ページ」という意味です.その新種について調べる場合,新種の学名が初めて出てくるページ(②)だけでなく,論文のタイトルや,論文の他のページも見る必要があるため,こういった情報があると便利です.

◆④新種と,新種発表,タイプ標本の簡単な説明
◆⑤タイプの種類とタイプ標本.例:ホロタイプ(holotype):Harada 16147 (CBM-FL-7130)

この新種のタイプ標本として,当館で収蔵されているのは,ホロタイプで,Harada 16147という標本です.また,その標本は,当館における登録番号が「FL-7130」です.CBMというのは,当館の植物標本庫(菌類,藻類を含む)の,国際的に登録された略号です.

(執筆:原田浩,2021)
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