第3章  三番瀬へいこう!
    東京湾のいちばん奥、三番瀬へのアクセス



三番瀬の海へ行ったことありますか?

 “三番瀬はどこですか?” このあいだも三番瀬の海を前にしてこう聞かれました。“ここが三番瀬の海ですよ”というと、みんな不思議な顔をします! もっと特別な海を夢見ていたらしいのです。
 どんな期待が“三番瀬”にあるのでしょう。 中高年の人ならば、遠い昔の記憶の中の若い頃のこと、白い砂浜、黒松の林、大きく弓なりに曲がった海辺の向こうに見える漁村や、灯台などの風景を連想していたかもしれませんね。
 でも若い人たちが知っている海の風景は、どうなのでしょう。海へ行くのは海水浴、潮干狩り? どこの海を知っていますか?
 マスコミなどで三番瀬が話題になっていることは知っていても、その三番瀬を見たことのない人も多いらしい。百聞は一見にしかず、という古い諺もあるから、まちから飛び出して、三番瀬を見に行きましょうよ。そして、その場所で、いま何が問題にされて、三番瀬が話題なのかをいっしょに考えましょう。
 さて、その気になって三番瀬への行きかたを確かめようとすると、最初の問題は誰に聞けばいいのかわからないことです。普通の地図は陸地の町名や番地、道路のことが中心で、三番瀬の海のことなどは載っていません。公民館や学校の所在地は書いてあっても、三番瀬の案内は出ていません。どこの市役所の、なに課が担当なのかも見当がつきません。
 誰に聞けばそれを教えてくれるのでしょう。インターネットが一番手っ取り早いかもしれない。そこにはどんな情報が、いくつ載っていました? 車ではなく、電車と歩くのと、どこで降りれば海にいかれるのでしょうか。

  • 陸の部分と海の部分は、役所の分担も違うらしい。海を担当している案内所はあるのか?
  • 三番瀬は、いくつかの市にまたがっているのかもしれない。
  • もっとくわしく図書館で調べるとすると、なにから引き出せばいいのだろう。

 こうしたいくつものハードルをこえて、ひとつずつ解決することから三番瀬への探検が始められるのですから、自分でトライすることです。
千葉県庁には三番瀬の担当チームがあるらしい。船橋駅前には三番瀬サテライトオフイスがある。三番瀬の展示をしている博物館はあるのでしょうか?

 よく紹介されているのは、船橋駅の南側からバスに乗り、船橋三番瀬海浜公園へ出るコース。でも、漁港があるはず、高波でこわれた護岸の話を聞いたことがあります。海岸線を横につなげて、三番瀬のまるごと探検はできないのでしょうか?
三番瀬の海が載っている地図をいくつか広げて、海へ近づく方法を調べてみましょう。三番瀬は浦安市・市川市・船橋市、そして谷津干潟のある習志野市とも関係がありそうです。

浦安市から

 東西線の浦安駅からまちの中を通って、まち探検しながら海までたっぷり歩く方法と、京葉線の新浦安駅からの二つの方法があります。
 浦安市は、市の面積の4分の3が戦後の埋立地ですから、みんなが歩いている所も何十年か前は海の中、干潟だったかもしれません。アシの茂る細い水路にはべか舟があって、アサリやノリの養殖も盛んだった。いまは、古い町並みと、外国風にヤシが植えられた大きなマンション風景とが同居しています。かなり歩くけれど、浦安駅から話題の猫実川や境川沿いに、裏道を通って海へ出るのも面白いコースです。
市役所近くには、昔の町並みを再現した郷土博物館があって、大勢のお年寄りボランティアが昔話も聞かせてくれます。三番瀬の西側にあたり、護岸の向こうに幕張が見える! 干潮になれば、すぐ目の前に砂浜が広がってくれます。

市川市から

 京葉線の市川塩浜駅から、歩いて10分ほどで海に出る。ここが三番瀬の真正面でもあるのですが、コンクリートの直立護岸で仕切られていますから、海は眺めるだけで、水に触れることはできません。
 漁港も避難場所がなくて、台風の時などは苦労が多いことでしょう。道路の北側には、幅は狭いがクロマツの防風林があります。
 市川塩浜駅のすぐ南側には、市川市の三番瀬案内所があります。目立たないプレハブ建築なのですが、アマモ場の復元の取り組みなどもやっていて、三番瀬の説明などもしてくれますから、電話予約して確かめてから行ってみるといいでしょう。
 もう一つのお勧めは、ふなばし三番瀬海浜公園につながる西側の海浜植物群落。ハマヒルガオやハチジョウナの花が見られます。打ち上げられた魚の死体には、ゴミムシの仲間が寄ってきます。ほんの小さい生態系ですが、三番瀬ではここだけです。踏み荒らさないで大切に見守りたいものです。

船橋市から

 ふなばし三番瀬海浜公園が有名です。三番瀬の海、潮干狩りというと、ここを指すようです。車を持っている人は別として、たいていは船橋駅からバスに揺られて25分、終点が海浜公園の前となります。
 電車に乗って近くまでいけないんですか? という人には京葉線の二俣新町駅から少し東へ歩き、交差点から南へ直線道路を25分歩いてください。
 夏の日には、日陰もなく単調な直線道路ですが、海岸の埋立地は流通関係の建物が並び、散歩道はないんだという実感も気づいて欲しい問題点です。
 二俣新町の駅前には案内看板が立っていますから、道に迷うことはありません。ただしこのあたりは、市川市と船橋市の境界線があるところ。注意深く、案内板を立てたのはどこかを観察してください。
 駅構内にはJRのもの、改札口を出ると、互いに遠慮しながら市川と船橋の看板が別々になっています。
 海浜公園の砂浜は、船が通るための航路を浚渫した砂を盛り上げた人工海浜です。25年もたつと、大昔からの自然と同じような砂浜になるのでしょうか? 再生とか、復元などという言葉の整理も、潮風を受けながら、現場の調査から始めると面白いと思います。
 ここから船橋漁港へはどう行ったらいい? もう一度、駅近くまで戻らないと横へはつながりませんでした! 

習志野市から

 ふつう、三番瀬は3市がかかわっているとされているので、習志野市は含まれません。でも、三番瀬は東京湾の一番奥、東西を埋め立てのコンクリート護岸で固められ、海は陸と区切られています。西が浦安市ならば、東が習志野市です。ラムサール登録地の谷津干潟がありますし、謎に包まれた第2湾岸の道路も近くにあります。三番瀬全体をいろんな角度で調べ歩いてみようという時、習志野市ははずせないのです。
 谷津干潟には、シギ、チドリなどの野鳥がたくさんやってきます。満潮の時は餌が採れないから、どこかへ行ってしまって見えません。市街地の真ん中に残されたこの四角が谷津干潟!を実感しましょう。
 習志野市には、本当の海は残っているのかな? これもお勧めの探検コースです。地図を頼りに自転車で行くと、公園墓地や浄水場などがあって、海はすぐ先にあるのに近寄れない。この先に何があるんだろう、と自転車を走らせると、幕張のメッセが見えてきます。
 道路は整備されていて、サイクリングコースとしては、最高なのですが・・・。

 三番瀬は何回も行ったよ、知ってるよ、という人、あなたが見た三番瀬はどこからでしたか? 冬ですか、夏ですか。誰もいない夜の三番瀬を知っていますか? いろんな顔の三番瀬を、自分の目で確かめて欲しいと思っています。
(高野史郎)


みんなで考えよう。
  • 三番瀬は横方向への移動が困難です。どうしてでしょうか?