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氷河地形を描く
  五百澤智也氏と氷河・氷河地形研究

 今からおよそ2万年前、日本列島がずっと寒かった時代には、高い山の上に氷河が存在していました。現在、日本アルプスや北海道の山などに、氷河の流動によって削られてできた圏谷(カール)、氷食谷(U字谷)、尖峰(ホルン)、鋸歯状山稜(アレート)などの地形や、氷河が削ったものが堆積した堤防状の地形(モレーン)などが分布しています。
 北アルプス穂高連峰の涸沢(からさわ)に、典型的な氷食地形が見られることから、この時期を涸沢氷期といいます。しかし日本の氷河は規模が小さかったため、ヨーロッパアルプスなどで見られるような典型的な氷食地形はほとんど見られず、氷河地形の分布も限られたものとされてきました。

 1960〜70年代に、空中写真判読と現地調査を基に氷河地形の研究を行った五百澤氏は、 北アルプス槍沢(やりさわ)、横尾谷(よこおたに)下流部で、それまで知られていなかった古い時期(5〜6万年前:横尾氷期)の氷河地形の分布を明らかにしました。

 また空中写真による氷河地形の判読基準を示し、それを基に、日本アルプス全域と日高山脈について、氷河地形分布図を作成しました。これらには、新旧両時期の氷河地形の分布が示されています。

 現在では、モレーンに含まれる火山灰などの年代測定の技術が進み、氷河が拡大した時期が、より細かいレベルで明らかにされていますが、氷河地形の新しい見方を示した五百澤氏の業績は、多くの研究者から評価されています。
079(写真) 氷河地形の調査(穂高屏風岩第二ルンゼ取付テラス)


背景の横尾谷斜面中途にある高まりの列(やや黒く見える)が、
五百澤氏が初めて存在を発見した横尾氷期の側堆石堤
人物は、五百澤氏 
081  日本の氷河地形分布図(北海道日高地方)と凡例@

 出典 新日本山岳誌(2004) 山と氷河の図譜(2007)
082  日本の氷河地形分布図(北海道日高地方)と凡例A
 出典 新日本山岳誌(2004) 山と氷河の図譜(2007)

083  日本の氷河地形分布図(北海道日高地方)と凡例B
 出典 新日本山岳誌(2004) 山と氷河の図譜(2007)
084  氷河の模式図

(小野,1999に加筆)
085  氷食地形模式図


(Davis, Lobeckに加筆)
077 (背景拡大パネル) 山地の氷河模式図

五百澤氏が自著の凡例として描いた図である。氷河のあり方を示す、より専門的な図として、現在でも盛んに引用されている

出典 鳥瞰図譜=日本アルプス(1979)   寸法 1335×900mm
078 (背景拡大パネル) 氷河作用をうけた山地模式図

五百澤氏が自著の凡例として描いた図である。氷河地形の様相を示す、より専門的な図として、現在でも盛んに引用されている

出典 鳥瞰図譜=日本アルプス(1979)   寸法 1475×900mm
氷河地形の例・・・山頂氷河と岩峰
086 (スケッチ画) ベルニナ北東面

出典 山と氷河の図譜(2007)   寸法 354×280mm
氷河地形の例・・・U字谷と氷河
087 (スケッチ画) アルプス・ミアージュ氷河遠景

出典 地理(1998.4) 山と氷河の図譜(2007)  寸法 354×280mm
氷河地形の例・・・氷河の末端と岩屑の堆積
088 (スケッチ画) ミアージュ氷河近景

出典 山と氷河の図譜(2007)   寸法 354×280mm
氷河地形の例・・・氷河に削られた尖峰(ホルン地形)
089 (スケッチ画) マッターホルン

出典 山と氷河の図譜(2007)   寸法 354×280mm
氷河地形の例・・・谷氷河の上流部
090 (スケッチ画) アレッチ氷河上流部

出典 山と氷河の図譜(2007)   寸法 354×280mm
氷河地形の例・・・氷河の下流・消耗域
091 (スケッチ画) アルプス・ウンターアール氷河とグリムゼル湖

出典 山と氷河の図譜(2007)   寸法 354×280mm

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