8 千葉市民ギャラリー

(旧神谷伝兵衛稲毛別荘)


所在地 千葉市
竣工年 T7
所有者 千葉市
設計者 不明
施工者 不明
構造 RC2
外壁 モルタル塗り
屋根形状・葺材 切妻造,瓦葺
建築規模 113m2

明治時代,日本において初めて,フランスの本格的ワイン醸造技術の導入を図った初代神谷伝兵衛の別荘である。茨城県牛久に葡萄園を営み,その事務所を塔を持つフランス風の華麗な洋館としたことからも窺えるように,彼の建築への思い入れは深い。彼の情熱は私的な別荘にも及んだのであった。

正面中央のゆったりとした階段を登った位置に,1階の床レベルが設定されている。その1階正面には5連のロマネスク風アーチが並び,吹き放しの柱廊を構成する。1階柱廊が左右対称であるのに対して,2階壁面及び屋根は非対称の構成をとる。シンメトリーを崩すことによって,堅苦しさを和らげ,洒落た雰囲気を生み出している。

柱廊から内部へ足を踏み入れると,予想通りの洋風の空間が展開される。玄関の天井にはシャンデリアが下がり,その中心飾りにはワイン王の別荘に相応しく,葡萄をモチーフとしたレリーフが施されている。玄関のマントルピースは色鮮やかなタイルが嵌め込まれ目をひく。

緩やかな曲線を描く階段を登ると,そこは1階と対照的に,12畳と8畳の和室から成る,数寄屋風の自在な室構成で,密度の濃い空間となっている。

また,この建物は,当時まだあまり普及していなかった鉄筋コンクリート構造をいち早く取り入れ,外壁にはタイルを貼り,更に小屋組にはキングポストトラスを採用する等,建築史,技術史的観点からも非常に興味深いものである。[江口]

玄関中心飾り


2階和室


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