稚魚は旅する

 日本の周辺には、約4千種類の魚がすんでいます。このうち、稚魚の形が知られているのは全体の1/4程度で、それらの生活の様子までわかっている種類はさらに少なくなります。
 わかっているものをいくつか紹介すると、カレイやヒラメの仲間は、目が体の両側にある時期には、海底にいるのではなく、水中を泳いでくらしています。また、沿岸の岩場でくらしているイシダイやカワハギも、稚魚の時期には、海面をただよう「流れ藻(ながれも)」のまわりでくらしています(下写真)。さらに、川にすむウナギは、はるか南の海でうまれ、稚魚の時代に黒潮にのってはるばると日本までやってきていることが最近になってわかりました。稚魚は、大きさや形だけではなく、生活そのものも親とは異なっているのです。

流れ藻

流れ藻に付くイシダイの稚魚
流れ藻は体の小さい稚魚にとって、よい隠れ場所になります。

 

レプトケファルス幼生

ウナギの仲間のレプトケファルス幼生
ウナギの仲間の稚魚は、このように細長い木の葉のような形をしています。

 

シラスウナギ

ウナギ
ウナギは、日本の南約3,000km、フィリピンの東方沖でレプトケファルス幼生として生まれます。稚魚は、この後、北赤道海流と黒潮に運ばれ、日本の近くにまでやってきます。写真の個体は、海の博物館の周辺で採集されました。移動の過程で、体はこのように細く、短くなります。これが川に上って、親ウナギに成長します。


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