企 画 展

戦国の争乱と関宿

会期:平成13年9月1日(土)〜9月30日(日)

  関東平野の中心にあり、河川交通で古くから栄えた関宿―この地をめぐって上杉謙信、武田信玄、北条氏綱など戦国の雄が争いを繰り広げてきました。一国と同じ値打ちのあると言われたここを治めていたのが簗田氏です。古河公方足利氏の家臣でありながら関宿城主として勢力を張り、戦国の雄を相手に同盟と裏切り、服従と対立、合戦と和睦を繰り広げてきました。 本企画展では、新たに所在が確認された簗田氏伝来の貴重な資料を中心に展示します。時代の波に翻弄(ほんろう)されながらも、戦国の一時代を築いた簗田氏、彼らが織りなした戦国時代の世界へご招待します。

1 関宿城主簗田氏
2 後北条氏の進出と関宿合戦
3 その後の簗田氏と関宿

1 関宿城主簗田氏

簗田家位牌
(東昌寺蔵)
簗田氏の出自
  簗田氏は下野国梁田御厨(栃木県足利市梁田町)に住して簗田姓を名乗ったとされます。簗田氏は鎌倉公方の家臣で、下総国下河辺庄水海(茨城県総和町水海)を本拠とした満助の頃からその地位を高めました。
  その後、古河公方になった足利成氏は満助の子簗田持助を関宿に配しました。関宿を本拠地とした簗田氏には戦国の世が待ち受けており、以後波瀾な運命を歩むことになります。


古河公方家臣簗田氏の特質
  簗田氏は古河公方足利氏の家臣でしたが、他の家臣とは異なる特質をもっています。簗田氏は公方家と深い血縁関係にあり、公方から偏諱を得る(主君から名前の1字をもらう)ことを慣例としてきました。
  また、簗田氏は早くから関東内陸の水上交通権を掌握していたようで、水海、関宿、品川などのネットワークを築きました。これにより各地を縦横に移動しながら地元水海・関宿だけでなく遠く離れた房総地方の出身者も自分の家臣にしています。


 

足利義氏条書
(当館保管)
2 後北条氏の進出と関宿合戦

北条氏綱起請文
(当館保管)
後北条氏の公方権力介入
  古河公方足利氏と簗田氏の深い血縁関係にくさびを打ったのが後北条氏でした。北条氏綱は娘を公方足利晴氏に嫁がせました。その後生まれた足利義氏が公方になり、公方権力内における後北条氏の発言力が強まりました。
  後北条氏は簗田氏に圧力をかけるようになり、簗田氏の本拠関宿城を公方義氏の居城にしました。

上杉謙信の南進と簗田氏
  永禄3年(1560)、越後の上杉謙信が関東に進んできました。この目的の1つが自分の手で足利藤氏(母は簗田高助の娘)を公方にすることで、そのために藤氏と血縁関係にある古河城の簗田晴助と接触しました。晴助は謙信に属したため、関宿城にいた公方義氏は身の危険を感じて関宿城を出て、小金城(松戸市)に逃げました。
  謙信の南進は、公方筆頭家臣の地位を追われた簗田氏にとって勢力回復の絶好の機会となったのです。

関宿合戦と関宿城落城
  上杉謙信の関東制覇は失敗しました。謙信の後退は後北条氏の勢力拡大を促すことになりました。やがて簗田氏と後北条氏との対立が表面化し、後北条氏は関宿城を攻撃しました。三次にわたる関宿合戦で簗田氏は関宿城を明け渡し水海城に逃れました。その後簗田氏は二度と関宿城に戻ることはありませんでした。
  念願の関宿城を手に入れた後北条氏は関東制覇に向けて大きく前進したことになります。

3 その後の簗田氏と関宿

足利義氏書状
(当館保管)
後北条氏への服属
  後北条氏は関宿城を入手したことにより、支城ネットワークが充実し、北関東への勢力拡大に弾みがつきました。天下統一をめざす織田信長の軍勢が関東に進出してきましたが、後北条氏はこれを退けました。
一方、関宿城を明け渡した簗田氏は水海に落ち着き、後北条氏の仲立ちで公方義氏から赦免を受けました。こうして簗田氏は公方家臣に復しましたが、事実上は後北条氏の軍事力に組み入れられたことになります。

近世の芽生えと簗田氏
  天正10年(1582)の公方義氏死去で、古河公方が消滅しました。天正18年(1590)、豊臣秀吉は小田原城攻撃を目前にして関宿周辺にもその勢力を及ぼしました。 小田原合戦で後北条氏が滅亡すると、簗田氏は関東に入った徳川家康の家臣になりました。家康は関東地方を治め、自分の異父弟松平康元を関宿城主にしました(関宿藩の始まり)。
  簗田氏はその後、江戸幕府の留守居役与力を代々勤めました。 

浅野長吉(長政)書状
(当館保管)
展示協力者

(敬称略)

敬称略
新井浩文 井上勝 佐藤博信 長塚孝 中山文人 羽部清 簗田壽昭 山中敏雄 鷲尾政市

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