「こけ」の仲間

「こけ」(苔)は,「木毛」とも書き,もともとは,木の幹などに着く毛のような小さな植物のことを 意味したようですが,地上や岩の上に生える同じような生き物も全て「こけ」と呼びます.
その代表が,地衣類と蘚苔類(コケ植物ともいう)です.

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枝につくいろいろな地衣類
杉の根元に生えるコアカミゴケ
(地衣類)
地上に生えるハイゴケ
(蘚苔類)

 <その他の「こけ」>

この他にも様々な仲間の生き物が「こけ」と呼ばれたり,「こけ」と思われています.
・クラマゴケ→ シダ植物
・モウセンゴケ→ 種子(しゅし)植物(花を咲かせる植物)
・鮎が食べる川底の石につく「こけ」→ ケイ藻(藻類の仲間)
・地上に生えるイシクラゲ→ ラン藻(シアノバクテリア)
・渓谷など湿った場所の岩や木の幹に生えるオレンジっぽい毛のようなスミレモ→ 緑藻

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モウセンゴケ(種子植物)
スミレモ(緑藻)

藻類と共生する菌類

地衣類は菌類の仲間ですが,その体を顕微鏡で観察すると,必ずもう一つの生物が見つかります.
それは藻類(そうるい)です.菌類と藻類は共生して,一つの体を作っているのです.地衣類に 共生している主な藻類は,緑藻ラン藻(シアノバクテリア)です.

 

菌類・緑藻・シアノバクテリアなどの生物の系統樹の中の位置づけへのリンクは

→ ●「地衣類の生活<その1>【生物の系統樹】」

 

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マツゲゴケ

マツゲゴケの断面顕微鏡写真

体は菌糸でできていて,緑藻が共生している

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アオキノリ

アオキノリの断面顕微鏡写真

ラン藻(シアノバクテリア)が共生している

地衣類の体は菌類と藻類でできている

そんな地衣類の体から,菌類と藻類を別々に取り出して培養することができます.
カラタチゴケ(①)から分離した菌類を培養すると茶色っぽい塊になり(②),藻類のほうは緑色です(③).

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企画展「驚異の地衣類」より

このように,地衣類の体は,菌類と藻類が合わさって出来上がっていて,自然界ではその状態で一つの生物に見えることから,地衣類のことを「菌類と藻類の共生体」と呼ぶこともあります.

 

しかし,「この地衣類の名前(学名)はどれに付けられているの?」という問いに対する答えは,「菌類」だけということになります.地衣類に共生する藻類には,藻類の名前がついているのです.

このことについて詳しくは

→●「地衣類の分類,種数:2.分類学上の位置づけの変遷」

の(4)~(7)をご覧ください