房総(千葉県)の地衣類図鑑
G3C9.痂状地衣:裸子器(レキデア型・ビアトラ型)

痂状地衣は,系統的にはとても多様なのに,外部形態の特徴が少ないため,野外での同定は難しいことが多く,慣れなければ,属どころか科や目さえも分からないことが珍しくありません.そこで,正確な同定をするためには,子器の内部構造を確かめる必要があります.つまり,子器の縦断切片を作製し,プレパラートを作って,顕微鏡で子嚢や子嚢胞子,その他の組織を観察するといったことが必要となってきます.

痂状地衣には,分類が明らかでないグループも多く残され,千葉県にも名前の分からない種がまだたくさん残されています.また,報告された種についても,必ずしも情報が十分にあるわけではないため,ここでは全種は掲載していませんので,ご注意ください.

 

1a.生葉上(常緑の樹木,シダなどの生きた葉の上)に生育する.・・・◆生葉上地衣

1b.生葉上ではなく,樹皮上,岩上,地上に生育・・・2へ
 
ph ph  

Fellhanera bouteillei

ヒノキノアオバゴケ →(●)

Coenogonium subluteum

ウスチャサラゴケ →(●)

 

2a.子器は桃色.地衣体には半球形の粉芽塊を生じる.・・・◆Dibaeis sorediata コナセンニンゴケ

2b.子器の色は様々)・・・3へ
 
ph    

Dibaeis sorediata

コナセンニンゴケ →(●)

 

 

3

2a.子器は橙色(K+紫色).子嚢胞子は無色,2室分極(隔壁が厚い)・・・◆Caloplaca s.lat. 広義ダイダイゴケ属

2b.子器盤は橙色,K-.縁部は橙白色.子嚢胞子は無色,2室(分極しない)か平行4室,子嚢頂部の肥厚は発達しない・・・4へ
2c.子器の黄褐色,褐色,黒色など.・・・5へ
 
◆Caloplaca s.lat. 広義ダイダイゴケ属
ph ph  

Caloplaca flavorubescens

ダイダイゴケ →(●)

Orientophila subscopularis

イソダイダイゴケ →(●)

 

3a.子嚢胞子は平行4室・・・◆Gyalecta japonica ジンムジサラゴケ

3b.子嚢胞子は2室・・・◆Coenogonium ダイダイサラゴケ属
 
◆Gyalecta japonica ジンムジサラゴケ
ph    

Gyalecta japonica

ジンムジサラゴケ →(●)

 

 

◆Coenogonium ダイダイサラゴケ属
ph ph ph

Coenogonium luteum

ダイダイサラゴケ →(●)

Coenogonium kawanae

ヒメダイダイサラゴケ →(●)

Coenogonium pineti

コツぶダイダイサラゴケ →(●)

4a.子嚢胞子は成熟すると褐色になり,ふつう2室,時に4室.子器盤と縁部はほぼ黒色のレキデア型・・・Buellia s.lat. 広義スミイボゴケ属

4b.子嚢胞子は無色.子器盤と縁部は褐色から黒色.・・・6へ
 
◆Buellia s. lat. 広義スミイボゴケ属
ph    

★Buellia yoshimurae

ハマスミイボゴケ →(●)

   

6a.子嚢胞子は1子嚢中に100個以上生じる・・・◆Acarosporaceae ホウネンゴケ科

6b.子嚢胞子は1子嚢中に8個,あるいはそれ以下.・・・7へ
 
◆Acarosporaceae ホウネンゴケ科
ph    

Sarcogyne regularis

コフキカクレホウネンゴケ →(●)

   

7a.共生藻はスミレモ科(糸状の緑藻)子器の縁部は,綿毛状の菌糸からなる・・・◆Cresponea カシゴケ属

7b.共生藻は単細胞性の緑藻・・・8へ
 
◆Cresponea カシゴケ属
ph ph ph

Cresponea japonica

ヒメカシゴケ →(●)

Cresponea macrocarpoides

ニセカシゴケ →(●)

Cresponea proximata

カシゴケ →(●)

8a.子嚢胞子には隔壁があり,2室,平行多室,石垣状多室のいずれか・・・9へ

8b.子嚢胞子に隔壁はない.単室・・・13へ

9a.子嚢胞子は巨大で幅25μmを超え,平行6~8室程度,1子嚢中に1個生じる.樹皮着生・・・◆Megalospora tuberculosa オオコゲボシゴケ
9a.子嚢胞子は幅10μm以下,2室か平行多室,通常は1子嚢中に8個生じる.樹皮着生か岩上生・・・10へ
 
◆Megalospora tuberculosa オオコゲボシゴケ(●)
ph ph  

 

   

10

10a.岩上生・・・11へ
10b.樹皮着生・・・Bacidia s.lat. 広義イボゴケ属(千葉県産種の分類学的検討はなされていないため,ここでは扱わない)

11

11a.子嚢層はI+濃青色,藍色など・・・12へ

11b.子嚢層はI-か,I+ごく淡い青色・・・◆Gyalidea コザラゴケ属
 
◆Gyalidea コザラゴケ属
ph    

Gyalidea kawanae

カワナコザラゴケ →(●)

   

12

12a.子嚢胞子は亜石垣状多室・・・◆Bacidia hakonensis ハコネイボゴケ

7b.子嚢胞子は平行多室・・・Bacidia s.lat. 広義イボゴケ属(千葉県産種の分類学的検討が進んでいないため,ここでは扱わない)
 
◆Bacidia hakonensis ハコネイボゴケ(●)
ph ph  
   

 

13

13a.岩上生・・・14へ

13b.樹皮着生・・・15へ

14

14a.子器の基部は地衣体に埋もれ,縁部はほぼ黒色,子器盤は灰白色の粉霜で覆われる・・・◆Porpidia albocaerulescens ヘリトリゴケ

14b.子器は無柄(地衣体上に裸出する)か,多少とも父愛に埋もれる.縁部・子器盤とも暗褐色からほぼ黒色・・・Lecidea s.lat. 広義ゴイシゴケ属(千葉県産種の分類学的検討が進んでいないため,ここでは扱わない)
 
◆Porpidia albocaerulescens ヘリトリゴケ(●)
ph ph  
   

 

15

15a.子器縁部はごく淡い黄褐色,子器盤は赤褐色から暗褐色・・・Maalcolmiella granifera ツブイボゴケ(図鑑準備中)

15b.子器縁部・子器盤ともに褐色か暗褐色,あるいはほぼ黒色・・・◆Lecidella レキデラ(チャクロイボゴケ)属
 
◆Lecidella レキデラ(チャクロイボゴケ)属
ph ph  

Lecidella elaeochroma

チャクロイボゴケ →(●)

Lecidella sendaiensis

レキデラ センダイエンシス →(●)