3.地衣類と化学分類

 

3-3.薄層(はくそう)クロマトグラフィー(TLC)Thin-layer chromatography

地衣類の分類や同定する際に,地衣成分を同定するための標準的な方法を紹介します.
  もくじ  ・「3-3-1.プレートの準備まで」へ
     ・「3-3-2.(その2)展開」へ
     ・「3-3-3.(その3)硫酸噴霧,加熱」へ
 
3-3-1.プレートの準備まで
標本から試料を取り,ミクロチューブで抽出する

・ミクロチューブ: 内径8~10mm程度のものを使用する

・ガラス毛細管: 市販のものとしては,ヘマトクリット毛細管で良い.これよりもう少し細い方が使い勝手が良いが,それには,ガラス管を伸ばして製作する必要がある.

extraction 実体顕微鏡下でごみを取り除いた試料(葉状地衣・樹状地衣なら標本から切り出し,痂状地衣なら削り出す)(矢印)をミクロチューブに入れ,数滴のアセトンを加えて抽出する.ミクロチューブには,標本番号を記したメンディングテープを貼り,TLCプレートにスポットを打つためのガラス毛細管を入れた状態.
 
TLCプレートの準備

・TLCプレート: メルク社製Kieselgel 60 F254を使用する

extraction プレートの下端(写真では手前)から2cmに線を引き,両脇2cmを開けて,17点を1cm間隔で記す(それぞれに抽出しスポットを打つ標本の番号など記す).その線から10cm上(写真では奥)に鉛筆で線を強く引いてそこのシリカゲル層を削り落とす.
 
プレートにスポットを打つ(スポッティング)

  ※ ここでは同じプレートを3枚作る例を示した.

extraction extraction extraction

ガラス毛細管で,ミクロチューブのアセトン(地衣成分が溶けていると期待される)を,プレート上に打つ.

ここでは同じプレートを3枚用意している.(後に溶媒A,B´,Cで1枚ずつ展開する) スポットを打ち終わった3枚
 
extraction

スポットを打った3枚のプレートを紫外線(短波長)下で検査する.

スポットした箇所に十分な地衣成分があると,黒っぽく見える.不十分な箇所については,さらにスポットを打つ.(※単純に地衣成分が多ければ多いほど良いというわけではない)

これでプレートの準備は完了.