イソギンチャクの体のつくり


 イソギンチャクの体のつくりはいたって単純です。餌をとるための触手が口盤上に並んでおり、その中央に開くのが口です。とらえた餌は口から続く口道を通り、胃腔へと運ばれて消化され、再び口から排泄されます。イソギンチャクの口・口道は、スリット状になっており、その両端には、管溝とよばれる溝があります。この溝の部分には、たくさんの長い繊毛(せんもう)が生えていて、胃腔と外との海水の交換をする役目を持っています。下の図のBは、イソギンチャクの体のつくりイソギンチャクの体をAの矢印のあたりで水平に切ったときの断面を示しています。イソギンチャクの体の中は、多くの隔膜とよばれる膜によって仕切られています。隔膜の先端は、口道より下の部分では、胃腔内に遊離しており、その部分が隔膜糸と呼ばれます。隔膜糸は「糸」の字があてられますが、実際は糸ではなく、隔膜の先端部分が何重にも折り重なったような構造になっています。さらに細かく観察すると、隔膜糸の先端は3つの部分に分かれているのがわかります。中央の出っ張りを刺胞帯、両側の出っ張りを繊毛帯と呼びます。隔膜糸には腺細胞が多く含まれており、この部分が餌の消化・吸収を担っています。
 さて,隔膜をもう一度よくみてみると、隔膜には膨らんでいる部分があるのがわかります.これが体を縦方向に収縮させるための筋肉(牽引筋)です。牽引筋は隣の隔膜とは膨らむ方向が違うはずです。膨らみが互いに向き合った隔膜同士がペアーで、隔膜対と呼ばれます。ただし、このうち管溝に接している2組の隔膜対だけは、膨らみが互いにそっぽを向いたようになっています.この2組の隔膜は方向隔膜と呼ばれ、イソギンチャクの体の軸を決める部分です。
 隔膜糸と牽引筋の間は、なんだかグニュグニュとしていますが,ここが生殖腺です.「腺」というと、ちゃんと独立した器官があるようにも思われますが、イソギンチャクでは、隔膜の中に生殖細胞が集まった部分、といった方がよいかもしれません.生殖腺の発達する隔膜は、イソギンチャクの種類によっておおよそ決まっています。
 初めに体のつくりが単純と書きましたが、こうやってみると、なんだかイソギンチャクも、意外に複雑な構造を持っていると思いませんか?


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