トピックス展 金魚図譜 〜明治の天才博物画家・伊藤熊太郎〜

会 期 令和8年1月31日(土)~令和8年2月8日(日)
会 場 千葉県立中央博物館 第2企画展示室
休館日 2月2日(月)

 明治中期から昭和初期にかけて精緻な博物画を数多く描いた画家、伊藤熊太郎の『魚譜』を中心に代表的な「魚類図鑑」などの作品を紹介します。『魚譜』は31枚の金魚、鯉、鮒、メダカの肉筆画からなる明治36年(1903)の作品です。

 伊藤熊太郎の経歴は謎に包まれ、空白期間が非常に長い人物でしたが、当館市民研究員の福地毅彦氏が長年の研究により、著書『海を渡った天才博物画家 伊藤熊太郎 謎に包まれた金魚図譜を追って』(山と渓谷社、2025年)をまとめられました。

 本展示では福地氏の協力を得て、主に福地氏所蔵の伊藤熊太郎関係資料を展示します。

展示資料

(1)『魚譜』
 明治36年(1903)伊藤熊太郎作。31枚の金魚、鯉、鮒、メダカの肉筆画からなります。福地毅彦著『海を渡った天才博物画家 伊藤熊太郎 謎に包まれた金魚図譜を追って』(山と渓谷社、2025年)で初めて書籍に収録、紹介されました。本図譜は書籍ではなく肉筆画なので、世の中にこの1部しか存在しません。

(2)『日本魚介図譜 第3集』
 3分冊の形で出版され、第1集の冒頭に伊藤熊太郎の作品であることが明記されています。第1集と第2集が昭和4年(1929)、第3集が昭和5年(1930)の発行。本の体裁ではなく、一枚一枚バラバラの図版が 20 枚で1集という形になっています。展示は第3集。 発売時の定価は6円(現在の約6万円相当)。

(3)『日本重要魚類図集』
 冒頭に伊藤熊太郎の作品であることが明記されています。当時の定価は3円80銭。出版は昭和6年(1931)。一般学生も手にすることが可能な魚類図鑑というコンセプトで作られたので、価格を抑えた廉価版になっています。

(4)『日本水産動植物図集』
 熊太郎最後の図鑑。昭和6年(1931)発行の上編と同7年(1932)発行の下編からなる2巻本。編纂者欄に画工として、伊藤熊太郎の名前が確認できます。
 令和4年(2022)12月放送のテレビ東京『開運!なんでも鑑定団』にこの肉筆原画100枚が鑑定に出されました。昭和10年(1935)のこの図集の広告を最後に、熊太郎の名前は世間から消え、再登場は50年後の『アニマ』誌上まで待たなければなりません。

(5)『アニマ』1985年11月号
 熊太郎の名前が世間に50年振りに登場した記事。

(6)尚美堂教育資料絵葉書集『日本重要水産動物』32枚
 明治30年(1897)発行の『訂正増補 日本重要水産動物図』の熊太郎作品を使って昭和15年(1940)に発売された絵葉書集。「魚類第1集」、「魚類第2集」、「海底の魚介」、「貝類」の4種類が作られ、各8枚の絵葉書が特製の袋に入っています。今回は全4種類32枚すべてを展示。

(7)木村小舟著『美しき自然』(嵩山房、明治43年)の口絵
 熊太郎唯一の風景画。

(8)『第二回水産博覧会審査報告 第三巻』(明治31年)より金魚の彩色図版3点
 第二回水産博覧会は明治30年(1897)9月1日から同年11月30日まで兵庫県神戸市で開催され、画工として伊藤熊太郎が雇用されました。
 今回は小説家・博物学研究家の荒俣宏氏所蔵の『第二回水産博覧会審査報告 第三巻』から金魚の彩色図版3点を複写し、パネルにして展示します。

『魚譜』図版9 秋錦の変わり

『魚譜』図版10 兜形 裂桃形

関連行事

ミュージアムトーク
研究員による展示解説を行います。
日時:1月31日(土)、2月1日(日)、2月7日(土)
11:00~11:30、14:30~15:00
参加方法:当日受付
料金:無料(別途入場料が必要です)