当館研究員 原田が地衣類の2種類を発表しました

東京大学千葉演習林から地衣類の2新種発見

植物学研究科 主任上席研究員 原田 浩

当館の重点研究「房総丘陵の自然─過去,現在,未来─」によって,県南部にある東京大学千葉演習林で採集された標本に基づき,地衣類の新種2種を当館の研究員らが発表しました.

1.Leptogium kiyosumiense H.Harada(レプトギウム キヨスミエンセ),キヨスミカワキノリ

アオキノリ属の新種で,発見地にちなみ学名をLeptogium kiyosumiense (レプトギウム キヨスミエンセ)とし,キヨスミカワキノリという和名を付けました.

キヨスミカワキノリ

クスノキの幹に生えていた.緑藻を共生藻とするウメノキゴケなどと違い,ラン藻を共生藻とするアオキノリ属は黒っぽい色をしている.

この演習林は,県の南部,鴨川市・君津市・大多喜町にまたがる22平方キロメートルの広大な地域で,県内では最も自然環境が豊かな場所と考えられています.そこで,重点研究の中で植物学研究科の原田浩等が地衣類の調査をしておりましたが,20152月に,見慣れないアオキノリ属を見つけました.詳しく研究したところ新種と判明し,学術雑誌に論文を投稿していましたが,2017615日に正式に発表*されました.

*論文: Harada H. 2017. Leptogium kiyosumiense sp. nov. (lichenized Ascomycota, Collemataceae), a new species of the Mallotium-group from Chiba-ken, central Japan. Lichenology 16 (1): 23–30.

 

2.Mazosia japonica A.Sakata & H.Harada (マゾシア ヤポニカ),ミキノフシアナゴケ

ミキノフシアナゴケ

スダジイの幹に着生していたミキノフシアナゴケの拡大写真

リトマスゴケ科のフシアナゴケ属は,日本ではこれまでに3種が沖縄などから知られていましたが,いずれも生きた葉に生える生葉上(せいようじょう)地衣でした.今回発見された新種は,木の幹に生えていたことから,和名をミキノフシアナゴケにしました.

この新種が見つかったのは,東京大学千葉演習林内の数か所で,スダジイなど常緑広葉樹の幹に着生していました.沖縄県西表島の1地点からも見つかりました.リトマスゴケ科を専門とする本館共同研究員の坂田歩美さん,地衣類の化学成分を研究されている吉川さん,本館職員原田の3名の共同研究としてまとめた論文**20176月に公表されました.

**論文: Sakata A, Harada H. & Yoshikawa H. 2017. Taxonomic study on the lichen family Roccellaceae (Arthoniales) of Japan (5). Two new corticolous species of Mazosia. Lichenology 16 (1): 31–47.

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