当館研究員 駒井智幸が
新種のヤドカリ「カイカタヒラテヤドカリ」を発見しました
当館動物学研究科長・駒井智幸(→職員紹介のページ)による、ホンヤドカリ科の新種Kumepagurus kaikata(和名新称:カイカタヒラテヤドカリ)を報告する論文が2020年9月30日付けで公表されました。
掲載誌はZootaxaです(https://doi.org/10.11646/zootaxa.4858.2.5)。
【著者名】TOMOYUKI KOMAI
【題 名】A new species of pagurid hermit crab assigned to the genus Kumepagurus Komai & Osawa, 2012 (Decapoda: Anomura: Paguroidea) from the Kaikata Seamount, Izu-Ogasawara Arc, Japan.
【掲載誌】Zootaxa 4858(2): 241–250.
カイカタヒラテヤドカリ Kumepagurus kaikata のホロタイプ標本(駒井智幸撮影)
前甲長で1.7 mm程度というとても小さなヤドカリです。扁平で大きな蓋状の右はさみ脚が特徴的で、オレンジ系のきれいな色をしています。
今回の論文で検討されたタイプ標本5個体は、駒井が参加した2009年3月に実施された学術研究船「淡青丸」による小笠原諸島海域の生物調査(KT-09-2航海)により採集されたもので、いずれも中央博物館に所蔵されています。
採集場所は海形海山の山頂付近(26°40.00’N, 140°55.54’E)の水深165–172 mの海底で、固い岩盤が主体です。トロールや生物採集用ドレッジなどの漁具を使うことができないため、採集作業には岩石採取にも利用されるチェーンバッグドレッジが用いられました。
![]() チェーンバッグドレッジを用いた採集の様子 |
![]() 淡青丸内の研究室 |
Kumepagurus(クメジマドウクツヤドカリ属)には、琉球諸島久米島の海底洞窟で発見されたK. cavernicolus(クメジマドウクツヤドカリ)が知られるだけで、今回発見された新種が2種目となります。
ただし、属のタイプ種であるクメジマドウクツヤドカリについては雌標本が得られていないため、属の特徴にまだ不明な点があり、カイカタヒラテヤドカリの帰属の決定については、まだ検討の余地が残されています。
房総半島の南に連なる伊豆・小笠原諸島弧には海山が連なりますが、その生物相については熱水噴出域を除いてまだまだわかっていないことが多く、継続した調査が望まれます。