平成30年度第3回中央博セミナー

平成30年度第3回中央博セミナーのご案内

日 時:平成30年12月12日(水)午後1時30分~
会 場:千葉県立中央博物館 本館1階 講堂(千葉市中央区青葉町955-2)
その他:当日受付、先着順、150名。入館料不要。

 

発表1

発表者:吹春俊光

タイトル:博物館ときのこ30年

要旨:私が中央博物館の準備室に,菌類担当としてはいったのは昭和62年(1987年)である.2年間の準備室のあと,平成元年(1989年)に中央博がオープンし,その間に中央博の建物も完成した.建物の中はほぼ空洞で,準備室の時代から,収蔵庫をつくり,標本棚をそろえ,備品もそろえ,房総の菌類相の調査がスタートした.生態園は,いったん裸地となったところへの植林から始まった.もちろん展示室もつくった.
 中央博がスタートしたときのスローガンは,博物館は県民の「蔵」であり,中央博生物系職員は,県内生息生物の,いわば住民台帳をつくることが目標であり,房総の自然と歴史の,過去と未来を見渡す展望台となることが,中央博の使命であると,当時の副館長から訓示を受けた.
 私が担当した,きのこ(大型菌類)の県内における調査は,東大の演習林が1954年につくった目録が,県内における唯一目録らしいもので,証拠標本をもとにした目録という意味では,ほぼ白紙の状態から始まった.また1991年には千葉菌類談話会が発足した.最初,談話会の会員は皆シロウト集団だったのだが,現在では皆立派なきのこ通となり,会員数は350人を超える.その談話会とともに,中央博の標本をあつめることになった.
 それから約30年,収蔵庫に収集した標本群は約3万点をこえ,そのうち約7割が県内産である.生態園や演習林をはじめ,千葉市や市原市,その他いくつかの県内各地の目録の他,千葉県菌類誌という目録(1-6)を継続して作成し,現在では695種(+8変種,4品種)合計707種類が千葉県産の大型菌類として知られるようになった.今では千葉県は日本の中でもよく菌類相が調査されている数少ない県の一つとなった.それは,やはり標本を蓄積することのできる中央博がつくられたからである.そして目録をつくることによって,房総の菌類相の全容と特徴がうかびあがってきた.
 今回の話の中では,ほぼ平成の時代と重なる30年の中央博の歴史の中で明らかになってきた房総の菌類相の特徴や,専門研究としての私のきのこ研究などを紹介する予定です.

 

発表2

発表者:桑原和之

タイトル: 野鳥の記録を収集し、まとめを紹介しています

要旨:千葉県の海岸は、多くの水鳥が飛来することで有名でした。特に、東京湾岸の干潟や河口部などの湿地は、シギ・チドリ類がとっても多い場所として知られていました。さらに、東京湾岸の湿地では、1970年代からシギ・チドリ類の数が、季節ごとに記録されていて、国内でも最も古くからの数の記録が残されています。そのシギ・チドリ類がとっても多い場所で、どのような場所で何を食べるか?など、私はチドリ類の採食行動を研究していました。
 昭和61年(1986年)、私は動物担当として博物館準備室で勤務するようになりました。中央博物館が開館すると、千葉県環境部や千葉市などの自治体から千葉県各地の鳥類相の調査が依頼されるようになりました。調査地を決め、定期的にその場所で確認された鳥類の個体数を記録するという単純な調査です。単純な調査ではありますが、案外地道な作業なので、誰も調査を行っていませんでした。調査を行った結果、東京湾岸だけではなく利根川やその水系の湿地、九十九里浜やその周辺の湿地が、シギ・チドリ類の重要渡来地であることがわかってきました。外房地域にもメリケンキアシシギという国内でも飛来数が少ないシギが、数多く飛来していることも確認できました。1990年代後半から、シギ・チドリ類が多い地域の鳥類相に関しては、随時、報告してきました。多くの地域が渡り鳥の飛来地として重要な地域であることを展示などでも紹介いたしました。
 残念ながら、多くのシギ・チドリ類が見られた時期は20年くらい前までで、現在、シギ・チドリ類の多くが、急激に減少してしまいました。シギ・チドリ類の中でも最も普通に見られていたシロチドリやハマシギなどの普通種が激減してしまったのです。鳥類相の調査を行い始めた30年前、普通に見られていた多くの鳥類も減少している傾向にあります。「人と自然のかかわり」展示室でも、野鳥は減少?という予想を立て、パネルで紹介しました。パネルで予想した以上に、現在、多くの鳥類が減少しているという嘆かわしい状況となってしまったのです。
 シギ・チドリ類の多くが急激に減少している原因は、まだ不明です。ただし、現況の把握だけはしておかなければなりません。現在は、多くの方々から、提供していただいた鳥類に関する観察記録をまとめ、各地の鳥類の動向を調べています。わかったことは、本館の環境教育講座や川のフィールド・ミュージアムなどの講座で紹介しています。なんとか野鳥の記録を収集し、まとめて、今後も紹介していく予定です。今回は、シギ・チドリ類の変遷などを中心に紹介する予定です。