令和5年度中央博セミナー

令和5年度中央博セミナーのご案内

千葉県立中央博物館では、職員の調査研究の成果を展示や教育普及事業を通じて、県民の皆さまにお届けするとともに、この中央博セミナーで調査研究の成果発表や調査レポートなどをお届けしています。どなたでもご参加いただけます。

日 時:令和6年3月14日(金)午後1時30分~
会 場:千葉県立中央博物館 本館1階 講堂(千葉市中央区青葉町955-2)
その他:当日受付、先着順150名、入館料不要。

 

発表1

発表者:浅野紗彩(企画調整課)

タイトル:草花らんまんの世界を未来へ繋ぐ-絶滅危惧植物の保全研究-

要旨:現在、日本の野生植物のうち4種に1種が絶滅の危機に瀕している。これらの絶滅危惧植物を守り、次世代に繋いでいくことが私の研究の主目的である。
 具体的には、各植物の生態的な特性を調べて適切な生育維持方法を検討する、集団間の遺伝的関係性を調べてどのような区分で保全すべきか探究するなどの研究を行っている。これらの研究から得られた知見は、自生地の外である植物園などで保全を行う生息域外保全や、生息域外保全から実際の自生地への植え戻しなどへ応用させている。
 今回のセミナーでは、これまでの保全研究の一例として環境省レッドリスト(2020)で絶滅危惧Ⅱ類とされているナデシコ科エンビセンノウ Lychnis wilfordiiの研究を紹介する。

 

発表2

発表者:須田華那(教育普及課)

タイトル:上空から覗く門前町

要旨:演者は、江戸時代後期における寺社門前町を主な対象として研究を行っている。門前町の空間を分析するとき、絵図(『江戸名所図会』等)や見取り図(「諸宗作事図帳」等)は非常に有用である。これらの史料を用いることで、上空から覗いたような視点で門前町を把握することができる。
 今回は、国立国会図書館デジタルコレクションで閲覧できる絵図や見取り図の史料を用いて、江戸という都市のなかにある門前町の空間を探り、併せて門前町の社会について紹介する。

 

発表3

発表者:照屋清之介(教育普及課)

タイトル:日本列島における海産貝類の系統と分類

要旨:演者は、日本列島沿岸域に生息する海産貝類を対象に、系統分類学的な研究を行っている。形態的に見極めが困難な貝類を対象にDNAの塩基配列の比較を行うことによって様々なことがわかってきた。例えば、県内の海岸でも拾うことができる1~2cm程度のホタルガイ類と呼ばれる小型の貝は、図鑑等で4~5種程度として掲載されることが多いが、分類学的再検討を行った結果、24種以上に分かれることが明らかにされつつある。逆に、別の貝類では、形態と系統が一致せず、簡易的なDNA解析では分類学的再検討をできない例も明らかになってきた。これらの研究結果について紹介する。