房総(千葉県)の地衣類図鑑
G3C.(緑藻地衣)痂状(かじょう)地衣:裸子器

痂状地衣は,系統的にはとても多様なのに,外部形態の特徴が少ないため,野外での同定は難しいことが多く,慣れなければ,属どころか科や目さえも分からないことが珍しくありません.そこで,正確な同定をするためには,子器の内部構造を確かめる必要があります.つまり,子器の縦断切片を作製し,プレパラートを作って,顕微鏡で子嚢や子嚢胞子,その他の組織を観察するといったことが必要となってきます.

痂状地衣には,分類が明らかでないグループも多く残され,千葉県にも名前の分からない種がまだたくさん残されています.また,報告された種についても,必ずしも情報が十分にあるわけではないため,ここでは全種は掲載していませんので,ご注意ください.

 

1a.子器は半球形から円盤状の突起に埋もれ,菌糸に由来する組織で覆われ子器盤は不明瞭.子嚢胞子は巨大(長さ50μmを超えることが多い)で単室・・・◆トリハダゴケ属Pertusaria

1b.子器盤は明瞭(明らかに裸出する).あるいは多少とも突出した子器縁部に囲まれた窪みに位置するため,見えにくい・・・2へ
 
◆Pertusaria トリハダゴケ属
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Pertusaria multipuncta

オオカノコゴケ →(●)

Pertusaria subcomposita

ナマリトリハダゴケモドキ →(●)

 

2a.子器盤は,多少とも突出した子器縁部に囲まれた窪みにあり,ほとんど見えない.子器縁部は地衣体に連続する果托と,それより内側に遊離している薄い果殻の2つからなる.子嚢胞子は平行多室か石垣状多室・・・◆Thelotremataceae フジゴケ科(部分),▼Diploschistes キッコウゴケ属

2b.子器の縁部はないか,あっても子器盤が見えないほど突出し覆うことはない.子器縁部が互いに遊離する2つの構造からかることはない.子嚢胞子は様々(単室,2室,平行多室,石垣状多室など)・・・3へ
 
◆Thelotremataceae フジゴケ科(部分)
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Thelotrema nipponnicum

キンチャクゴケ →(●)

Thelotrema subtile

ホソフジゴケ →(●)

 

▼Diploschistes キッコウゴケ属
(準備中)    

 

 

 

3a.子器は突出し子器盤の周りは果托・果殻など周りの地衣体とは異なる組織で覆われるか,子器盤は地衣体に埋もれる・・・4へ

3b.子器は突出せず,地衣体にも埋もれず,子器盤の周りに特別な組織は発達しない・・・◆Arthonia
 
◆Arthonia ホシゴケ属など
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Arthonia trilocularis

ミツゴホシゴケ →(●)

 

 

 

4a.子器盤は多少とも地衣体に埋もれる.顕著な子器縁部の構造を欠くか,地衣体由来の縁部が放射状に割れる・・・5へ

4b.子器盤は,地衣体から多少とも突出した縁部(果托・果殻)に囲まれ,地衣体に埋もれることはない.・・・6へ

5a.子器盤(多少とも褐色だが,類白色の粉霜で覆われる)は,地衣体由来の放射状に割れる縁部で囲われる・・・◆Thelotrema grossomarginatum

5b.子器には顕著な縁部はなく,子器盤(多少とも褐色を帯びた灰色)は地衣体に囲まれるように見える.・・・▼Mazosia japonica ミキノフシアナゴケ
5c.子器盤はほぼ黒色で,同色の果殻で囲まれるが,区別は困難.子器は地衣体に埋もれる(ほぼ同じ高さ)・・・★Buellia yoshimurae ハマスミイボゴケ
 
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◆Thelotrema grossomarginatum

 →(●)

◆Mazosia japonica

ミキノフシアナゴケ →(●)

★Buellia yoshimurae

ハマスミイボゴケ →(●)

6a.子器の縁部は,綿毛状の菌糸からなる・・・◆Byssoloma ワタヘリゴケ属など

6b.子器の縁部は,多少とも緻密な組織からなる・・・7へ
 
◆Byssoloma ワタヘリゴケ属
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Byssoloma subdiscordans

ワタヘリゴケ →(●)

 

 

7a.子器はレカノラ型[子器の縁部に果托(共生藻が分布)がある]・・・8へ

7b.子器はレキデア型かビアトラ型[子器の縁部に果托(共生藻が分布)はない]・・・9へ

 子器はレカノラ型 ・・・●G3C8「レカノラ型」のページへ
 
◆Lecanora チャシブゴケ属
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Lecanora megalocheila

ナミチャシブゴケ →(●)

Lecanora nipponica

ヤマトチャシブゴケ →(●)

Lecanora leprosa

コチャシブゴケ →(●)

▼その他
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Maronea constans

アオチャゴケ →(●)

Tephromela atra

クロイボゴケ →(●)

 

9

 子器はレキデア型・ビアトラ型 ・・・●G3C9「レキデア型・ビアトラ型」のページへ
 
◆レキデア型
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Bacidia hakonensis

ハコネイボゴケ →(●)

Buellia yoshimurae

ハマスミイボゴケ →(●)

Cresponea proximata

カシゴケ →(●)

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Lecidella elaeochroma

チャクロイボゴケ →(●)

Porpidia albocaerulescens

ヘリトリゴケ →(●)

Sarcogyne regularis

コフキカクレホウネンゴケ →(●)

▼ビアトラ型
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Caloplaca flavorubescens

ダイダイゴケ →(●)

Coenogonium luteum

ダイダイサラゴケ →(●)

Fellhanera bouteillei

ヒノキノアオバゴケ →(●)

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Gyalecta japonica

ジンムジサラゴケ →(●)

Gyalidea kawanae

カワナコザラゴケ →(●)

Scoliciosporum chlorococcumi

ニセマキミゴケ →(●)