調査研究事業:「房総(千葉県)の地衣類誌」の概要
 
最初の目標: 千葉県産地衣類のリストの完成

調査研究事業「房総の地衣類誌」の目的は,房総(千葉県)に生育する地衣類を詳しく調べ,記録していくことです.このことは,当館における地衣類を担当する専門家として,最も重要な課題として位置付け,取り組んできました.「記録」ということには,論文や報告書として発表することと,証拠となる標本を収集し保存していくことも含まれます.

 

開館(1989年)した当初は,千葉県にどの地衣類が生育しているのかという情報が十分にありませんでした.そこでまず,千葉県に生育する地衣類の種のリストを完成することを,この調査研究事業の目標としました.これを達成するために,以下のことを実施しました.

 

1.チェックリストの作成
2.地衣類相調査
3.未知種の探索,同定,分類学的研究
 
1.チェックリストの作成

これまでに発表された論文や報告書の情報を整理し,検討して,千葉県に産する地衣類の種のリストを作っていくことにしました.言うのは簡単ですが,日本産の地衣類に関する何千件もある文献を,チェックし,千葉県から報告されたデータを抜き出すのは膨大な作業です.抽出されたデータにある学名などを検討し,整理したのが,チェックリストです.

その一方で,千葉県産の地衣類について調査研究〔このあと2と3で説明する〕を行い,その成果を論文や報告書にまとめ発表しました.その情報を更に次のチェックリストの改訂に反映していく.ということを繰り返し,リストの完成を目指しています.

→ ●「チェックリスト」についてもう少し詳しく
日本産地衣類に関する文献を調べた結果,千葉県産地衣類に関する最初の記録は1892年だったことが分かりました.その次は1927年です.これらについて別のページで少し紹介します.
→ ●「千葉県産地衣類に関する最初の記録」について
その後は,主に日本人の研究者による分類の論文や環境調査の報告書に,少しずつ千葉県の地衣類に関する情報が掲載されていきました.この状況は千葉県立中央博物館が開館する1989年頃まで続きました.
→ ●「千葉県産地衣類に関する記録:千葉県立中央博物館の開館前」へ
1989年に開館して以降に発表された論文等で,当館職員が著者でないものは以下にまとめました.
→ ●「千葉県産地衣類に関する記録:開館以降」へ
2.地衣類相調査

地域を決めて,そこに生育する植物(あるいは菌類)の種類を調べる調査を植物相調査(あるいはフロラ調査)と呼びます.地衣類の場合は地衣類相調査です.一つの山や,1市町村を対象地域にすることが普通です.それぞれの地域で詳細に調査することによって,より多くの種が発見され,それぞれの種の生育状況が分かってきます.この情報を総合することによって,千葉県全域を対象とする地衣類相調査を進めている,という見方もできるでしょう.

→ ●「地衣類相調査」についてもう少し詳しく
3.未知種の探索,同定,分類学的研究
チェックリストにまだ掲載されていない地衣類を発見するための調査も実施しました.収集した標本を同定し,県内から記録がない種だった場合には,論文等で発表しました.
また,日本には分類学的に問題があったり,まだ十分に研究されていなかったりする地衣類の仲間がたくさんあります.そのような地衣類の特定のグループに注目して収集し,分類学的研究をすることもあります.研究の結果,新種が見つかる場合もありました.
→ ●「未知種の探索,同定,分類学的研究」についてもう少し詳しく
 
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