地衣類の形態について更に詳しく解説します.

ここでは,「2.樹状地衣の体の造り」を紹介します.右のもくじから,各項目に移動できます

 
もくじ  

1.葉状地衣の体の造り

A.子器の造り

2.樹状地衣の体の造り

B.粉子器等の造り

3.痂状地衣の体の造り

 
 
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2.樹状(じゅじょう)地衣の体の造り

2-1. 横断切片

樹状地衣は,樹状部の断面に属ごとの特徴が表れます.

●ハナゴケ

Cladonia rangiferina

 

sect-cladonia
cladonia

子柄(しへい)と呼ばれる樹状部の断面は,ストローのように中空になっています.内側は,共生藻がない内髄がありますが,比較的固い組織です.その外側に藻類層,一番外側は未分化の皮層があります.ハナゴケ属でも,ウグイスゴケなどでは皮層は分化します.

 

●ヨコワサルオガセ

Usnea diffracta

 

sect-usnea
usnea

ハナゴケと違って中空ではなく,中軸と呼ばれる,菌糸だけからなるとても丈夫な組織が中心部に位置して体を支えます.固い(中軸よりももろい)皮層と中軸の間は比較的バラバラの菌糸が占める髄層ですが,この図では中軸に近いところは地衣成分の結晶により見えにくくなっています.共生藻は主に皮層の近くに分布します.

 

●ホネキノリ

Alectoria lata

 

sect-alectoria
alectoria

外側を取り囲み皮層は菌糸だけからなる丈夫な組織で,体を支えます.その内側にはバラバラの菌糸が占める髄層が広がり,共生藻が皮層近くに多く分布しています(共生藻も菌糸の中身もコットンブルーで青く染めています).ハリガネキノリ属Bryoriaも同じような構造をしています.

 

●ハイイロキゴケ

Stereocaulon vesuvianum

sect-stereocaulon
stereocaulon

初心者だとハナゴケ属と間違えることがありますが,断面は全く違います.中心部(というより大部分)は菌糸だけからなる,木材のようにとても丈夫な中軸で占められています.細い部分の断面を見ると,表面に藻類層と皮層が認められます.

2-2. ハナゴケ属の体の造り

cladonia
ハナゴケ属の樹状部は地衣体とは呼ばず,子柄(しへい)と呼びます.それは,発生的に見て,子器(しき)の柄であるとの考えからです.図にあるように,多くの種では鱗片状の基本葉体があり,これが地衣体にあたります.体にはこのように葉状の部分がありますが,習慣的に樹状地衣とされています.

2-3. キゴケ属の体の造り

stereocaulon

キゴケ属の樹状部は,地衣体と考えられています.大きさと形がなんとなくハナゴケ属に似ているのですが,子器の柄ではないので,擬子柄(ぎしへい)と呼ばれます.

擬子柄の表面には細かな粒状や円筒状などの突起があり,棘枝(きょくし)と呼ばれ,ここに共生藻の緑藻が分布します.

キゴケ属は緑藻だけでなく,ラン藻も同時に共生しています.その部分は頭状体(とうじょうたい)と呼ばれます.ここでは薄い灰色がかったブドウ色をしてます.