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地衣類の形態について更に詳しく解説します.
ここでは,「1.葉状地衣の体の造り」を紹介します.右のもくじから,各項目に移動できます. |
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地衣体の裂片. 葉状地衣の体はしばしば枝分かれしています.その分かれた部分を裂片(れっぺん)といいます.表側を背面(はいめん),裏側を腹面(ふくめん)といいます. |
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シリア. 裂片の縁から,まつ毛のような構造が伸びる種類があります.これをシリアといいます. |
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シリアと偽根. 葉状地衣はふつうは,腹面から伸びる偽根で基物に張り付きます.シリアと偽根の形は似ていますが,偽根は地衣体の下側に,シリアは縁につきます(上図は地衣体を横から見ている). |
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シリア.シリアがある種では,普通は左のマツゲゴケのように根元から先端に向かいだんだん細くなります.しかし,右のフトネゴケでは,シリアの根元が著しく膨れています. |
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粉芽塊.ムカデコゴケの地衣体背面には,皿状の出っ張りがあって,その中には細かな粒が満たされています.皿状のものを粉芽塊といい,粒は粉芽といいます.粉芽はとても小さいので,粉のように見えます. |
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粉芽.ムカデコゴケの粉芽をプレパラートにして生物顕微鏡で観察します.粉芽の直径は30から40マイクロメートル程度(25分の1から35分の1ミリ程度)です.粉芽には,共生藻の緑藻があって,それを菌糸が取り囲んでいます.粉芽が粉芽塊から離れてどこかに付着すると,そこの環境さえよければ新たな個体に生長することができます.栄養繁殖の有効な手段です. |
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円形の粉芽塊.コフキヂリナリアの粉芽塊は,ムカデコゴケと同じように円形です. |
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裂片の縁にできる丸い粉芽塊.マツゲゴケの粉芽塊は,裂片の縁が細かく枝分かれした先にできます. |
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裂片の沿ってできる粉芽塊.ナミガタウメノキゴケでは,裂片の縁に沿って連続した粉芽塊ができます.その部分はフリル状に波打ちます. |
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ウメノキゴケ地衣体の中央部はざらざらしたように見えますが,ここに裂芽が密生しています. |
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ウメノキゴケの裂芽を拡大してみると,地衣体背面から伸びた突起であることが分かります.粉芽のように簡単には離れないので,粉芽ほど栄養繁殖に貢献しているとはいえないようです. |
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コナヒメウメノキゴケの地衣体背面には,泡のように膨れた構造が見えます.これがパスチュールです.この写真ではたくさんのパスチュールが壊れています. |
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パスチュールは地衣体の背面側(皮層と藻類層付近)がはがれて膨れたのもです.中空になっているので壊れやすく,コナヒメウメノキゴケでは断片化したパスチュールが栄養繁殖に役立っているようです. |
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「パスチュール」といっても,もっと別のタイプの構造を指すことがあります. → (●)もう少し詳しく |
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トゲトコブシゴケ(左)などトコブシゴケ属の地衣体背面にはたくさんの白っぽい擬盃点があります.テリハゴケ(右)の擬盃点は,裂片の縁に沿って点在した丸い白点です. |
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マツゲゴケの地衣体背面を拡大すると,細かな網目模様,マキラが見えます. |
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マツゲゴケのマキラは,背面の上皮層の細かな割れ目と一致します.状態によっては,この網目模様の白い部分の幅が広くなり,ほとんどマキラが確認できなくなってしまうことがあります. |
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ウメノキゴケの仲間の偽根3タイプ. 科などによって偽根の造りは随分と違いますが,ウメノキゴケの仲間では3つの分枝のタイプが認められています.左から単一,二叉分枝,スカロース型です.種を分ける重要な特徴です. |
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イワタケやカワイワタケ(図)の仲間には,地衣体腹面の中心部分の一か所(矢印)で基物の岩上に張り付く種類が多く知られています.その部分を,臍(へそ)のようだということで,臍状体(さいじょうたい)と呼びます. |
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テリハヨロイゴケの地衣体の腹面にある丸い模様は盃点です.ヨロイゴケ属の仲間に見られる構造です. |
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盃点を拡大してみると,クレーターのような窪みであることが分かります. |
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ツメゴケ属の腹面には,網目状の脈があり,種により形状が異なり,重要な特徴になります. |
(文献)吉村庸・原田浩・Hur Jae-Seoun. 2009./ 日本地衣類誌(1)ツメゴケ属Peltigera./ Lichenology 8(1): 31-72. |
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